PTSDを元に発症する病。その症状は周囲の人間に悪夢を強制するものだった。
現代病とも呼べるその怪奇的な病を治療する為、患者の夢の中へ潜り悪夢の元と戦う医者たち。
シリアスながらもコミカルな日常シーンで和ませてくれる作品です。
その中でもやはり、悪夢の歪さ、現実と乖離した異世界とも呼べる夢の描写が凄まじく、まるで本物の悪夢を見ている感覚に見舞われる。
などと難しい話をしてみたが、実の所、中身はヒーロー物です。
個性的なキャラクターが生み出すコメディシーンとシリアスなバトルシーンが魅力です。
物語の始まりから悪夢。話の大筋も悪夢。
そのテーマを元にストーリーは進行します。
そしていつの間にか、この世界に入り込んでいる自分に気が付きます。
物珍しいながらも面白い、そんな作品です。
――人間の内面心理・深層心理への侵入を物語の重要舞台とする――
いわゆる〝精神侵入物〟と言うべきジャンルがある。
商業作品で言えば――
山本英夫の『ホムンクルス』
富沢順の『TRICK STAR』
夢枕獏の『サイコダイバーシリーズ』
筒井康隆の『パプリカ』
テレビドラマの『バーチャルガール』
――などがある
この〝精神侵入物〟というジャンルは、いずれも名作傑作揃いであり、それらを書いている人々もスゴ腕揃いなのが分かる。逆に言えば、このジャンルは書き手に極めて高い技量を要求する。なぜなら――
〝設定を組み上げ、世界観を完成させるのが恐ろしく難しいからである〟
登場人物たちが存在する〝現実世界〟
そして物語の中で事件の主体となる〝心理内面世界〟
この二つは全く異なるものであり直接繋がることはない。しかし人間の内面には間違いなく存在しているものであり、人間一人一人の肉体や行動に影響を及ぼしている
まず、現実と心理、この二つの異なる世界をどう繋ぐか? その法則やルールをいかにしてわかりやすく、かつ説得力を持って設定できるかが最初の壁となる
次に〝真理内面世界の描写〟が作者のもとに立ちはだかる。現実の物理法則が当たり前に通用する現実世界を描写するならまだいい。しかし心の内面というのは物理法則は全く通用しない。そこは幻想世界でありイメージそのものの世界だ。それをどう描写するのか? そして、どうルール付けてストーリーを描くのか? 作者の表現力が強く試されるのである
現実と心理世界とをどう結びつけるか?
捉えようのない幻想と心理世界をどう描くのか?
そしてそれを成功させてストーリーとしてどう結実させるのか?
立ちはだかる壁はあまりに分厚いのだ
そしてここに、その分厚い壁を見事にぶち破った怪物作品がある
人々の精神と心を蝕む心の病【亜種夢強制共感病】
この病は患者本人だけでなく、伝染病のように周囲の人々へと伝播していく。死に至ることもあり単なる心の病として軽視することもできない恐ろしさがある
この作品が卓越しているのは、まさに〝精神侵入物〟の王道と言うべきスタイルで、患者の内面世界に治療者がダイブする事で〝命を救うための戦い〟を展開させていると言う部分だ
病により歪んでしまった患者の心の中――
その歪んだ世界を、主人公の【湧泉 凛】をはじめとする治療者たちが、死のリスクを背負いながら文字通り命をかけて患者の命を救おうとする
本作では、その治療者自身が、かつては元患者であり共感病という病を克服しているという背景が語られている。それゆえに主人公の凜たちが病に向き合おうとする姿勢は掛け値なしに真剣なのだ。そして、そこから生み出されるドラマが圧巻である。この難易度の高いジャンルを見事に書き上げた作者を私は称賛したい
まずお断りしておくと、私に医学の知識は全く無い。これっぽっちも無い。
故に、この作品に関しては読むのに少し身構えてしまっていたのだが――。杞憂だった。それも、とても良い意味で。
濃密でいて、わかりやすい設定。細やかなのに、くどさを感じさせずスルスルと頭に入ってくる描写。魅力と個性に溢れる、愛すべき登場人物達。それら全てを、非常に高いレベルで纏めている。
「テンプレにはもう飽きた」「面白い現代バトルファンタジーが読みたい」そんな思いを抱く諸兄に、自信を持ってオススメできる作品である。
……あくまで私の個人的見解ではあるが、ぶっちゃけ書籍化とかするんじゃねぇかなコレ。書籍化したら買う。絶対買う。3冊買う。1冊は自分が読む用で1冊は布教用、もう1冊は通勤電車内でも読み易いように電子書籍で買う。
PTSDを題材にした医療もの…と思いきや、PTSDを基にした奇病を治療する現代バトルファンタジーです。
その奇病とは、悪夢を他人に強制的に感染させるもののこと。患者の奇病を発症させないように努め、発症した場合は悪夢の中に入り、ストレス分子である「メアの子」を排除するのが主人公達専門治療医の役割です。
夢の中で戦う設定も凝っており、自身のPTSDの原因となったものを想起させる武器で戦うが、使いすぎるとフラッシュバックしてストレスが溜まる、という制限の付け方も絶妙です。
夢の中でのバトルのダメージが現実世界に跳ね返ってくる「夢幻肢痛」や、「フラッシュバック」、「(ストレス)浄化活動」など、もともとある用語にオリジナル解釈している所に独自性があり高ポイント。
医療用語もわかりやすいように噛み砕いて書かれている為に、スルスルと読めてしまいます。
奇病発症時の緊迫感や、 バトルの熱さは必見!
また、主人公含む4人の個性的なキャラクター達も魅力の一つです。
日常シーンのドタバタコメディと熱くかっこいい戦闘シーンのギャップには唸らされます。
どんどと引き込まれる物語です。ご一読あれ!
フォローいただいたご縁でこの物語に出会いました。
更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
舞台設定、世界観の説明の仕方が上手く、あっさりとこの物語の世界に入ることができました。
その設定も秀逸で、心の病を患った人を、自身のトラウマで持って治療に挑むと言うもの。キャラクター達の内面を描写しつつ、それを能力として振るえる。しかしやり過ぎると、自分のトラウマに呑まれかねない。
この辺りの設定の組み方が、お見事だと思いました。
登場人物達も魅力的で、そのやり取りにほっこりすることも(一部例外あり。キーワードは聖)。
他とは違う医療系異能力現代ファンタジー物語。他の皆さまも是非読んでみてください。
本当に面白くて思わず一気読みしてしまった・・・・
ライトノベル好きな方も宮部みゆきさんや田中芳樹さん等の重厚なファンタジーやSF好きな方にも受け入れられると思われる作品で書籍化されて欲しい秀作です。
処女作ということで僅かな誤字や脱字はありますがそれをまったく問題とも思わせない素晴らしい出来で一気に世界観に引き込まれてしまいました。設定上サクサク更新は難しいとは思いますが楽しみにしています。
個人的には姉推しです。めっちゃ強いけど苦労してそうな方には底抜けに明るくて、気づかいが出来る彼氏が出来て欲しい・・・・
私が読んだカクヨム小説の中で一番面白かったです。
簡単なあらすじとしては、PTSD(ストレス)を原因とする「亜種夢強制共感病」が存在する世界。数値化されたPTSDの値によって、その病気の進行度を監視し、主人公達(医者)は規定値を逸脱した患者の悪夢の中へダイブ。各々が『夢の中で』行使する能力を用いて、治療をするというもの。
医療用語が出てきますが、前提的知識は全く必要ありません。
作品に必要な情報をピックアップしてくれているので、すんなりとこの世界観に没頭することが出来ます。私がそうでした。
物語の登場人物は、きちんとした個性があり、姿や性格、声まで連想できるほどのものに成っています。素晴らしい。
まだ最新話は18話です。
皆さん。今なら、この作品が有名になる前に古参アピ出来ますよ。
一話たりとも退屈な時間はございません。
面白すぎて一気に駆け抜けてしまいました。
本当に読んで良かったです。
【初めての印象】
初めて見た時、サクッと読めますよというキャッチコピーから、軽いお話なのかな?と思っていました。全面的に”サクッ”と感の出ているアピールの仕方だったので、軽い気持ちで小説URLを踏んでみたわけです。今まで、ここまで印象の変わる小説に出逢ったことはなかった気がします。正直初めてでした。もう少し、作品自体のアピールもしないともったいないな、と言うのが第一印象です。
【あらすじ、そして本文へ】
まず驚いたのは、あらすじです。とてつもなく面白そうではないですか。
これは期待!となった作品でもあります。
思わず信じてしまいそうなほど、説得力のある表現力を持つ作品。
オリジナリティと説得力の融合=実在しているのでは?
小説とは、フィクションです。だからこそ、リアリティが必要。あたかも存在していると読者に思わせる説得力が重要である。この作品を読んだとき、ああ凄いなと率直に感じた。恐らく、一から世界観や設定を組んでいる作品であると思われる。もし、こういう病気があったならば、どうなるのだろうか?想像力が豊かでないとオリジナリティは出せない。しかも、人が想像できないものだからこそ、オリジナリティをあると言うことになる、なので、小説として成り立たせるには、それだけの説得力が必要となってくるわけだ。
プロローグとなる部分は、とても不思議な感じがする。それゆえに、現実ではないのだろうという予想はつくが、細かな描写で鮮やかに描いているので、もしかしたらそういう人がいる世界(人間ではないような人間がいる世界)なのではないかと錯覚さえ起こす。
現実と夢のバランスも面白い作品。あなたもきっとこの世界観の虜になることでしょう。
是非、お手に取られて見てくださいね。お奨めです。
この作品はタイトルから見ても分かるように独特なもの。
プロローグの最初の一文を読めば、どれほど怪奇的で毒々しいのかを理解できずとも、感じ取ることができるでしょう。
どことなく芸術的で、退廃的で、脱力感のある物語とそれを絡めとる夢のような設定が組み合わさって、興味を惹くのではないでしょうか?
作者さんにはもっと気持ち悪い悪夢を見て、それを小説に反映してもらいたいですね。そんなちょっと嗜虐心が煽られる小説ではありませんが、興味は尽きない者だと思います。
もし、悪夢にうなされているのなら、悪夢を知りたいのなら、この一作を読むことをお勧めしましょう。