麦わら帽子

白と黒のパーカー

第1話 麦わら帽子

 麦わら帽子のお爺さん、ドンドン叩いて見つめてた。

 心配性に歪ませた、くちゃくちゃ笑顔で「安心しなさい」


 鎖に繋がれ早数ヶ月、衰弱し切った私の身体。

 細い体躯に、通らん食道。

 ほとんどお水のお粥を舐め取り、這いつくばって光を探してる。


 いつしか気づいた私の身体、ガタガタ震えて寒さが迎える。

 外は白、中は黒、怯えた私はガラスの破片で色を失う手術した。

 ボトボトと水の溢れる音がして、ペロリと舐めればしょっぱい塩味。

 幼い頃一度だけ遊んだ鉄棒のその匂い、それが一番近かった。


 いつも暗かった私のお家、いつにも増して光は無くなり気が滅入る。

 カンカンカンといつもと同じ窓際覗いて笑うてる、麦わら帽子のお爺さん。

 優しい声で「安心しなさい」あの言葉信じてからもう何年経ったんかなぁ。

 視界には何も無し、見えんくなった私の両目。

 希少性が奪われた、そう言って両親は既に私を捨てた。

 暗がりのボロボロな家にウチ一人、寂しいなぁ。怖いなぁ。誰か助けてくれへんかなぁ。


 ガチャガチャと、玄関先から音がする。

 ボロくなっても鍵は掛かってる。

 逃げ出そうにも私を閉ざす、あの黒い濃い影に揺らめくクソみたいなドア。

 ドカンと一発凄い音、思わず両耳塞いでしまう。

 その隙に入ってきた誰かの靴音気づかんと、急に腕掴まれドクンと跳ねる。

 気ぃ付けば、頬叩かれて床に寝る。

 いきなり感じた鋭い痛みで、何も見えんはずやのに、目の前は白黒とチカチカしてた。

 気が動転し泣き叫ぶ、ガリガリのこの身体、いじくって何が楽しいん。分からへん、分からへんなんにもかんにも分かりたくない。


 ガチャガチャと、頭の上から音がする。

 ズカズカと部屋に入って来た人間は、どうやらウチを助けてくれへんみたいやなぁ。

 もうどうでもええ、諦めた。

 ガサガサと衣擦れの音、ふわりと漂う饐えた臭い。

 思うように動かん身体にイラついて、舌打ちしながら脚を広げる。

 何をするんか知らんけど、痛い事だけはやめて下さいと泣いてみる。


 暫く動きが止まったら、次はどうなるんかと思った瞬間、聴き慣れた「安心しなさい」の言葉と同時に麦わら帽子は私を貫いた。


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麦わら帽子 白と黒のパーカー @shirokuro87

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