第47話 眠り姫と、予感の的中

 嫌な予感は的中した。

 

 期末テストの張り出し日。

 白音が、大幅にテストの順位を落とした。


 前回7位だったのが……68位。

 急降下にも程がある下落っぷりだった。


「なあ、流石におかしくないか?」


 白音の部屋。

 俺が尋ねるも、白音は表情を硬くしたまま答えない。


「あはは……」


 しばらくして、白音が頭を掻いた。

 その動作は、壊れたブリキ人形のようにぎこちない。


「まあ、そんなこともありますよねー」


 いやいやいや。

 そんなこともある、で済まされるような下降っぷりじゃないだろこれは。


「絶対に、なんかあるでしょ」


 受け身なことに定評がある俺も、流石に切り込んだ。

 ぴくんと、白音の肩が震える。


「隠してるの、バレバレなんだよ……遡って東京タワーに行った時くらい? から、変だし、最近はずっと調子悪そうだし」


 胸の内に秘めていた疑念をぶつける。

 なぜか肺のあたりがムカムカしていた。

 

 俺に気を使ったかなんだかわからないけれど、白音が何かを隠してしんどい思いをしていることに……不快感を覚えていた。


 白音は視線を彷徨わせた後、口を開く。


「……実はここ最近、ちょっとぼーっとしていることが増えて」

「うん、それは見ててわかるけど……」

「でも大丈夫です! 多分、寒くなってきて免疫がちょっと落ちているだけなんで」


 もう何度も見た空元気。

 “免疫が落ちているから”という理由に、説得力は無いように思えた。


 このところずっと白音と一緒に居るからか、彼女の表情の微妙な機微というか。

 なんとなく、彼女が本当のことを言っているのか、そうでないことを言っているのかが、わかるようになっていた。


「……病院、行った方がいいんじゃ?」

「大袈裟ですよー、冬を乗り越えるまでの辛抱です」

「いやいや、そういう問題じゃ……」


 そこで、頭の中で稲妻が走る。


 白音の体調不良が始まったタイミング。

 彼女が頑なにその理由に触れない訳。

 

 バラバラだった複数の要素が集まって、繋がって、


「なあ、もしかして」


 半ば直感に近い感覚で、言葉を並べる。


「俺との添い寝が、原因だったりする?」


 ……。

 …………。

 多分、10秒くらい時間が止まっていたと思う。

 

「……じゃあ私、ご飯作りますね」

「ちょ、おい」


 明らかなスルーをかまして、白音が立ち上がった。

 そのまま台所へ退散しようとしている。


 これは図星かと、俺も立ち上がって腕を伸ばし──。

 

「あっ……」

「白音……!!」


 ぐらりと、小さな体躯が前のめりになった。


 次いでドサッと、さほど大きくない衝撃音。


「お、おい! 大丈夫か?」


 床にぶっ倒れた白音を抱き起こし、額に手を当てる。


 熱い。

 明らかに熱がある。


 掌から伝わってくる高温に、俺は背筋が寒くなるのを感じた。

 


————————————————


お待たせしてすみません。

ちょっと思うようにプロットが進まず難航しております。

息抜きで新作ラブコメを公開しましたので、もしよろしければご一読いただければと思います。


▼作品URL▼

https://kakuyomu.jp/works/16816452220158101305

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学園の眠り姫と添い寝フレンドになった件 青季 ふゆ@『美少女とぶらり旅』1巻発売 @jun_no_ai

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