_十六

 それから、永遠の城は随分と落ち着きを取り戻していった。

 一週間前にクオンさんとキープリンさんの葬儀が行われ、それからはまた建物の作業が始まっていた。

「だいぶここにも慣れてきたな」

 ラム・シュウが赤い髪を洗いながら呟いた。僕も髪を流す。そして温泉に入った。

「でも、少し寂しいですね」

「そうだね。やっぱりヤオくんがいないと少し寂しいね」

 湯に浸かりながら言った。すっかりラム・シュウは腕を隠すことをやめて、営業中に堂々と温泉に入っている。

 この一週間で、ほかの社員や避難者たちもここが使えるように手配したことで、とても賑わっていた。

「少し早いけど出ようか」

「ラム・シュウにしては早すぎますけどね」

 温泉を出て、服を着る。外にはイトが待っていた。

「随分早いね」

 緑色の髪は少し湿っている。

「まあね、ヤオくんがいないと少し寂しい気がしてね」

「べつに、今に始まった話じゃないでしょ」

 話しながら向かうのは、座敷だ。

 そこには、ヤオさんとアイザさんが仲良さそうに座っている。

「あれ、随分と早いんですね」

 早速ヤオさんがラム・シュウにちょっかいをかける。

「なんだよ。別にいいじゃないか」

「もちろんですよ。むしろ僕は嬉しい限りですね。やはり、みんなで食べる食事は美味しいですから」

 僕も腹が減っていた。すぐに準備されているご飯を食べた。食堂を見ると、ポーリンさんが忙しそうに指示を出している。

「左手で食べるのは慣れたの?」

 イトがヤオさんに聞いている。しかし、答えたのはアイザさんだ。

「もちろんですよ。それに、もしうまく食べられない時には、ほら」

 ヤオさんが掴みづらそうにしている小さな卵を代わりにつかむと、ヤオさんの口に持っていった。

「こうしてあげればいいんですから」

 二人とも顔を赤くしていた。

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植物配線 鳥居ぴぴき @satone_migibayashi

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