第7話

 その夜はいつもより早く帰って来たお父様。

 私が怪我をしたと報告を受けたからだろう。


 お父様は帰ってくるや否や、玄関ホールで大声をあげた。


「ミニーノ…ミニーノの怪我は大丈夫なのか!」


 すぐにレーラさんが迎えに出て、お父様に事情を説明した。


「ミニーノお嬢様は頬に少し火傷を負いましたが、大丈夫にございます」

「そうか……それで、ミニーノは?」


 お父様に呼ばれて私はそっと近くの柱から顔を出す。


「…お父様、お帰りなさい」

「ミニーノ頬に怪我をしたのか…レーラ…スタとサラ、コーダを直ぐにここに呼んでまえれ」


「はっ、はい」


 わたしの頬の傷を見て、怖い顔を浮かべたお父様にわたしは慌てた。


「待って違うの全部私が悪いの。スタさんとサラさんコーダは悪く無いのお父様。怒るならみんなでは無く私を怒って」

「どういうことだ…ミニーノ」


「わたしが勝手に調理場に入ってコンロを触ったの。コンロの炎からコーダが私を庇ってくれたの」

「それは本当か? わかったその話はスタとサラ、コーダが来たら書斎で聞こう」


 レーラさんに呼ばれ直ぐに飛んできた、スタさんとサラさん、コーダはお父様を見ると床に膝を付け頭を下げた。


「旦那様すみません」

「すみません、旦那様」

「申し訳ありません」


 わたしはスタさんとサラさん、コーダの前で手を広げてポロポロ涙を落とした。


「お父様違うの、わたしなの私が全部悪いの」


 お父様の前で自分が悪いと泣き喚いた…それを見てお父様はしばらく悩み。


「うむ、わかった…スタとサラは帰ってよい。コーダだけ来い詳しい話は書斎で聞く…」


「かしこまりました」


 お父様の後について書斎へと向かった。書斎の中は仕事机とその前にテーブルを挟んで2人掛けのソファーが置いてあった。


「さぁ、座りなさい」


 そう言われてわたしは座ったけど、コーダは入り口の近くに、立ったままだった。


「コーダ?」

「旦那様すみません。私は同じ所には座れません」

「今日はいい、そこに座りなさい」


 そう言われてコーダは私の隣に座った、その前にはお父様が座った。


「さっきの話だとミニーノが勝手に調理場に入ったのだな」

「はい、お父様」


「何故。そのようなことをしたんだ?」

「魔法の本を書庫で読んで、魔法が気になって調理場に入ってしまったの」


 はぁっと、お父様はため息をつき。


「そうか…コーダありがとう。ミニーノの傷がこの程度で済んだのは君のお陰だ。君が早く気が付かなければミニーノは…もっと酷い火傷を負っていた感謝をする」


 お父様はコーダに深々く頭を下げた。


「頭をあげてください…旦那様」

「いや、礼をさせてくれ…」


 お父様の声も震えていた、それほどに私は悪い事をしたんだ。


「ミニーノも調理場に人がいない時に勝手に入ってはダメだ…お前は私達と同じで魔力を持っている。スタさん一家は魔力を持たないから、調理場の魔法具の調節はスタさん一家に合わせているんだ。ミニーノのが触った事により、調節されていた魔晶石がいつも以上に魔力を帯びて、異常反応をしたのだな…本当に今日はこの程度で済んでよかった」


 震える声で説明をして目頭を抑えるお父様。

 わたしはお父様にもお母様にもみんなにも心配をかけてしまった。


「わかりました、お父様」

「コーダの火傷はどうなんだ?」


「直ぐに避けましたので大丈夫です」

「そうか…ふうっ…ミニーノは罰として晩御飯は抜きだ、部屋で反省をしなさい」


「はい、お父様」


 お父様に「ここで仕事をするから下がりなさい」と言われて部屋を後にした。

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えぇ! 乙女ゲームの悪役令嬢になっちゃった…… にのまえ @pochi777

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