ゆっくりと心に染み込んでゆく

なんだか心が乾燥してるなぁ……と思っている方に読んでほしいです。潤いますよ。

物語は未亡人の魔法使いアデールのもとへ、両親を失った子ヴェロニクが来るところから始まります。
王様、王子様、同僚、そして亡くなった人々。いろいろな人間のレースのような想いと思い出が、ふわりふわりと重なって、透過した日の光が美しい紋様を描き出す。
もちろん、そこには光だけでなく影もある――

そんな雰囲気のある柔らかな物語です。

スターチスはそれほど水を必要としない花だそうですね。
だから水をやりすぎてはいけないのだと。
この物語はその塩梅をわかっているように思います。

重すぎず、軽すぎず、ほのかに甘くてわずかに苦く、すっきりとした味わい。
ぜひ、ご一読あれ。