第65話 女王様になったレティシア
私の娘レティシアが、今日まさにこの瞬間、女王になる戴冠式を迎える。
思えば、各国の王族に命を狙われたり、求婚を迫られたりと、決して平坦な道ではなかった。
けれど、レティシアの心は一貫していた。
「私ね、ノア君が大好きなの。いつも、私を優先してくれて、大事にしてくれるのよ?それで、時間がなくなっても嫌な顔ひとつせず、朝早くから夜遅くまで努力しているわ。ノア君といれば、私はずっと幸せでいられると思う」
幼い頃に言った娘の言葉は本物だった。大国の皇帝の息子が結婚を申し込もうと、高名な魔道師から言い寄られようと、一途にノア君を想っていた。
レティシアは、各国の王族の顔色など覗う必要がないほどの功績を、次々にあげていった。新しい産業を興し、さまざまな分野で革命をひきおこした。魔道師としても最高の位まで登り詰めた娘が唯一望んだのが、ノア君との結婚だった。
私とオーウェン様は、娘の望みをもちろん喜んで受け入れた。ハミルトン・パリノ伯爵とゾーイの息子のノア君は今では、かつてのハミルトン様の麗しさを上回る美麗さと、鍛え上げられた体躯に、聡明な頭脳を備えた美丈夫になっていた。彼も、またレティシアに一途で、至宝のようにレティシアに接している。
今日は、戴冠式と結婚式も兼ねた、これ以上ないほどのおめでたい日だ。
レティシアが、大聖堂で女王の冠を被り、ノア君と永遠の誓いのキスをすると、もちろん溢れんばかりの祝福の声がこだました。
私とゾーイがそれを見て涙をこぼす。
「オリビアお嬢様の子供と、私の息子が結婚するなんて、こんな嬉しいことが起こるなんて!!これは、現実なのだろうか?」
ゾーイが言うと、ラナ・マジーク伯爵夫人がゾーイのほっぺをつねった。
「痛い・・・ラナ、感謝!現実だわ。ふっふふ」
「なんにしても、おめでたいですわぁ。うちのイライジャとレティシア様を結婚させたかったけれど、次に期待しましわ。孫の代で・・・・・・」
ラナは、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「これで、ようやく私はハミ君を許すことができますよ。彼の功績は、あの優秀なノア君をこの世に誕生させたことですね。レティシア様の最高の伴侶として申し分ないです」
エマは、しみじみと、涙を流していた。そして、一言、問題発言をしたのだった。
「私は、満足です。ゾーイ、ラナ、あとは貴女達にまかせましたよ。私はオブシディアンと一緒になって獣人の世界に行くことにしました」
「「「「「えぇーーーーー!!!そんな、もう会えないの?悲しすぎるよ(わ)」」」」
「最後まで、落ちがあるんだな、エマさんは・・・」
ゾーイが呟き、ラナが笑った。
「それでこそ、私達のエマよ!!もっと、早く一緒になれば良かったのに・・・獣人の世界って遠いの?」
「いいえ、女王様の居室の隣に、獣人界に通じる扉を設置中です」
「「「「なぁーーに?それ?悲しんで損した」」」」
皆が笑い合う中、レティシア女王とノア伯爵は、幸せそうに頬を染めて歓声に応えるのだった。
オリビアの恋と3人の護衛侍女 青空一夏 @sachimaru
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