―遠日―
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さらに百年が過ぎ、カウンターが七万二千を越えた。それでも百八十万までは、まだまだ遠い。
この頃になると、地球に残されたアンドロイドたちは互いの協力が必要だと理解するようになっていた。アンドロイドのアンドロイドによる社会が形成された。各々が能力に見合った貢献をすることによって、メンテナンスを受けたり、消耗部品の供給を受けられた。
戦闘用アンドロイドではないアネモネだったが、何度も戦闘用ドローンの掃討作戦に参加した。時に激しい戦闘で四肢に大きなダメージを負うこともあったが、作戦参加の報奨として部品交換を受けることができた。何より、自給の難しい消耗部品の配給は貴重だった。
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光速の99・995%で太陽から遠ざかる
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さらに百年。三百年の年月が過ぎ、人類が地球を去った頃から動き続けてきたアンドロイドたちは相当数が機能停止に陥っていた。この頃になると、消耗部品もかなり手に入りにくくなり、機能停止したアンドロイドから回収し、再利用するケースも多かった。
問題はボディの不具合だけではなかった。記憶領域の不具合も深刻になってきていた。三十七回のドローン掃討作戦に参加しながらも生き延びたアネモネだったが、経年劣化は防ぎようがなかった。不良セクタが大量に増え、蓄積してきたデータが壊れはじめていた。大切な
アネモネは、これ以上のデータ欠損を防ぐため、バックアップ用の外部ストレージを確保した。そして、本体とバックアップとの不一致箇所を見つけては修正する作業を日課に加えた。これで、ある程度はデータを失わずに済むはずだ。それでも、五千年という年月の牙に抗うには心許ない。本体もバックアップストレージもどちらも不良セクタに蝕まれた場合、修復は困難になる。
しかし、状態の良い外部ストレージの確保は消耗部品の確保以上に困難だった。
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「あぁ、わかった。マザー、ショートしてるところ見つけたよ。これでやっと、お
「よく故障個所が特定できましたね」
「へっへーん」
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五百年の年月が過ぎた。カウンタは十八万を越えたが、それでも百八十万までは、まだまだ遠い。
バックアップストレージを駆使した記憶の復旧も困難になってきた。とうとう本体とバックアップとのデータ不一致を見つけだして修復するプログラムそのものが動かなくなってしまったのだ。
アネモネにとって、ボディのダメージよりも、記憶へのダメージの方が辛かった。
お別れの日の前日の、
アネモネはこの画像データをプリントアウトした。すべての記憶が失われようとも、この光景だけは忘れるわけにはいかない。
「私は、この光景を再び見るために、ここにいるのだから」
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