―刻刻―
❀❀
アネモネは孤独を感じない。耐えているわけではなく、そもそも、そういった感情を持ち合わせてはいない。しかし、ミッションを
五千年間、きちんと家を守り、
もう宇宙船は出発したのだろうか。アネモネはしばらくじっと空を見上げていた。
✿✿
光速の99・995%という亜光速で飛ぶ
❀❀
その年の秋、
それでも
部屋の中も暴風に引っ掻き回されて、ぐちゃぐちゃになってしまった。アネモネは、残念そうな表情を浮かべながら、
降り込んだ雨でびっしょりと濡れてしまった紙製の小さな小箱を床から拾い上げた。中から四つのどんぐりが転がりだした。マジックで描かれた目と口。接着剤で留めた、手と足。
アネモネは記憶をスキャンした。
「このどんぐりは、いちばん小さいから私ね。目を青くするの」
「はい、とても可愛らしいですよ」
「これ。このどんぐりのお帽子、お母さまに似合う?」
「えぇ、とっても」
「こっちがお父さま。お髭を付けなきゃね」
「えぇ、そうですね」
「アネモネは、紫のお洋服」
「あら、私は紫のお洋服なんて持っていませんよ?」
「ううん。アネモネは紫のお洋服。きっと似合うから」
小箱の中にはもう一つ、小さな記憶メモリが入っていた。どんなデータが記録されているのか、アネモネは興味津々メモリにアクセスした。
上方から、アネモネの顔が下がってくる。しゃがもうとしているのだ。
「では、明日、一緒にお散歩に出かけて、何かプレゼントになるものを探しに行きましょうか」
画面が左右に激しく揺れる。カメラを構えたまま、
アネモネは、これが先程のどんぐりの工作の記憶に繋がるものだと理解した。自分の中の記憶を辿る。
そこには、カメラを構えておどけながら、両親の結婚記念日にプレゼントを送りたいと相談してくる
孤独とは無縁なアネモネだったが、過去の記憶を振り返るばかりではなく、
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