第46話 暗黒戦士は拗ねる

「俺のターン、ドロー!」


 よし、攻撃した後にしか使えないけどいいカードが来た。さっきパックで適当に入れてしまったカードだけど、良く効果を読んでみたらとても強いな。


 しかし、こちらのカード効果発動に対して、ウルティの神宝龍カンダカラノオロチによるカウンターは確実に飛んでくるだろうし……。

 さて、ミスト・ゴースト1枚と墓地の元素鉄英エレメタルスだけでどう動くか。確実に1度は動きを邪魔されると考えないと!


「……俺は手札の元素鉄英エレメタルスミスト・ゴーストを墓地に捨てて、墓地の元素鉄英エレメタルスロック・ジャイアントの効果を発動! このカードを手札に戻す!」


「出た! ご主人様の墓地活用コンボです! いつ見ても惚れ惚れしちゃいますよ!」


「はぁ!? 何よ。そんなことするんだったら、さっきのエレメタルズ・セグメンテーションで何を選ばれても良かったんじゃない! この詐欺師!」


 クロンとプロメが正反対の評価を俺に下す。クロンのはやっぱり照れてしまうし、プロメはさっきから超辛辣だ。別にだました覚えはないんですけど!?


「墓地からの回収? うーん、それだめ。私は手札の神宝龍カンダカラノオロチイクタマを捨てて、場のオブジェクトスキル、神宝龍祟カンダカラノオロチタタリの効果を発動するよ」


「ここで来たか!?」


神宝龍祟カンダカラノオロチタタリの効果。1ターンに1度だけ、手札の神宝龍カンダカラノオロチを1体捨てることで、相手モンスターの効果の発動を無効にして破壊するよ」


 地面に冥界へとつながるホールが開かれたが、その上空から雷による一撃が中へと流れ込んで爆発音を上げた。遅れて登ってくる煙。

 恐らく現世へ這い上がろうとしていたロック・ジャイアントが雷に打たれたのだろう。


「あれっ? どうして墓地にいるはずのロック・ジャイアントが破壊されるんですか? 墓地にいたら破壊されないはず……あれっ?」


「ふんっ。クロン、やっぱりアンタはポンコツね。墓地にいるモンスターは破壊されることは無いから、神宝龍祟カンダカラノオロチタタリの『モンスター効果の発動を無効にする』効果までが適用されたのよ」


「うぐっ!? そんな上級者向けのことを当然みたいに言わないでください!」


「ふふーん、ポ・ン・ド・ラァ」(ポンコツドラゴンの略)


「ぐぬぬぬぬぬ!」


 ロック・ジャイアントの帰還は失敗に終わり、ただ単純に俺の手札が1枚消滅。

 とでも思ったか!? ウルティ! ここからが勝負だ!


「だけど、続いて墓地のウッド・ハンマーの効果発動! 手札から元素鉄英エレメタルスが捨てられた場合、墓地のこのカードを手札に加える」


「あれっ、私が1枚の損? むぅ……」


「まだ終わりじゃない! 今度は手札のウッド・ハンマーを捨て、墓地の元素鉄英エレメタルスダーク・アベンジャーの効果発動! このカードを墓地から特殊召喚!」


 再び開く冥界への大穴。今度は神の力を宿す龍でもよみがえりを止めることはできない!

 大穴から幽鬼の如き戦士が現れる。漆黒でボロボロのローブを身に纏い、両手に鋭い鉤爪かぎづめを装備した、闇をつかさどる元素鉄英エレメタルス。何度でもゾンビのごとく蘇る能力を持った頼もしい戦士の登場だ。


――――――――――――――――――――

元素鉄英エレメタルスダーク・アベンジャー

コスト

APアタックポイント6000

BPブレイクポイント

――――――――――――――――――――


「よし、バトルフェイズに入る! ダーク・アベンジャーで直接攻撃ダイレクトアタック!」


「ウルティ! 危ない! やっぱりアンタは最低最悪の犯罪者ね!」


「――なんだけど、その危ない爪じゃなくてデコピンとかできないかなぁ!?」


 あんな幼女に獣すらえぐり殺しそうな爪で攻撃とか良心が痛む! やめて! 人の悲鳴とか俺が最も聞きたくないものだから!


 無茶ぶりな命令を受けたダーク・アベンジャーはウルティの前で急停止し、困ったようにおろおろとし出す。やがてテンションが駄々下がりしたように空を仰ぎ見て、コツンッとつま先でウルティのすねを蹴った。


「あうっ」


『フンッ』


――――――――――――――――――――

ウルティ LPライフポイント6→4

――――――――――――――――――――


 不死の力を身につけた、暗き闇の戦士の拗ねたすね蹴り……ダジャレじゃないぞ、ダジャレじゃない。

 一応の攻撃が終わったダーク・アベンジャーは、いかにも不機嫌ですと感情をあらわにしながらこちらの場へと戻ってくる。漆黒の戦士に大衆の前で恥をかかせちゃったな、ゴメン。


「むぅ! 痛かった! 私は戦闘ダメージを受けた時に、神鏡シンキョウ八咫鏡ヤタノカガミのもう一つの効果を発動!」


「なっ!? 手札補充に加えて、もう一つ効果があるのか!?」


「自分が戦闘ダメージを受けた時、相手に1ポイントのダメージを与えるよ? さらにその効果発動に対して、手札の神宝龍カンダカラノオロチクサグサノモノノヒレを捨てて効果発動」


 さっき手札に加えていたモンスターだ。ここで来たか!


「自分が戦闘ダメージを受けた時、1ポイントのライフを回復して、相手に1ポイントのダメージを与えるよ」


 鈍く光を反射していた八咫鏡が輝き、俺へと向けてまるで虫眼鏡で紙を焼くように焦点を絞ってくる。さらにウルティの頭上にいくつもの光の玉が出現し、俺へと向かって突進してきた!

 いくつもいくつもビー玉サイズの玉が俺にぶつかり、光が俺の肌に強烈な熱をもたらす。結構容赦ないなウルティちゃん!


「いだだだだだ!? いやっ、熱っ!? 結構熱いぞこれ!」


――――――――――――――――――――

朝陽   LPライフポイント4→3→2

ウルティ LPライフポイント4→5

――――――――――――――――――――


「へへーん! ウルティの実力はどお? アタシの自慢な妹分なんだから、アンタなんか手玉に取られて当然よね!」


「だっ、だけどウルティちゃんの手札は0枚です。ピンチの後はチャンスです! 頑張れー! ご主人様―! 次のターンで追い抜かせ-!」


「お、俺はメインフェイズ2に入る。最後の手札であるノーマルスキルカード、遅れてきた主力を発動! デッキからカードを2枚ドローする! ただし、このターンはこれ以上モンスターを場に出すことができない」


「うぅん……止められない」


 この遅れてきた主力もさっきのパックで当てたカードだ。攻撃後のメインフェイズ2にしか発動できないけど、2枚ドローできる破格のメリット効果。

 ただしデメリットとしてこれ以上はモンスターを場に出せなくなる。だけどダーク・アベンジャーはパワーがそこそこあるし、少ない手札からの反撃にはあいづらいだろう。


 これで手札は2枚。いけるか?


「俺はスキルカードを1枚セットしてターンエンド」


――――――――――――――――――――

朝陽 LPライフポイント2 手札1枚

●モンスター

元素鉄英エレメタルスダーク・アベンジャー

●スキル

伏せ1枚


ウルティ LPライフポイント5 手札0枚

●モンスター

なし

●スキル

神鏡シンキョウ八咫鏡ヤタノカガミ

神宝龍祟カンダカラノオロチタタリ

――――――――――――――――――――


 ウルティの戦術は相手の動きに対するカウンターが主力だ。だけど予想外のこちらの動きに手札を消費してしまい、もうこちらがどんどんと押していける流れになってきている。このまま貫けば、追い抜かせる!


 だが、段々と押されてきている状況だというのに、ウルティは次にぼーっと空を眺めた。そして……


「……くるよ、が、来るよ」


「えっ?」


「予感がするの。このターンで、私は大きくなる・・・・・。私のターン、ドロー」

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(ポンコツ)変身ドラゴン少女とのカードバトル戦記 ~カードになれる少女とドローで全てを救う!~ フォトンうさぎ @photon_rabbit

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