第39話 Bali memories(バリ島の思い出)

僕「了解。そうするとBEACH WALKショッピングモールのデッキの入口にイタリアンとローカルフードを出すお店があるんですよね。すぐ側だからそこにしますか。まずはその前に、折角、BEACH WALKに来たんだから、店内のショップをウィンドウショッピングして周りますか。」


山田「ラジャ。そうしましょう。今晩はイタリアンでよろしくです。ショッピングモール店内は、どんな店があるんでしょうか。散策していたいです。」


僕「観光客相手の店ばかりだから、値段はインドネシアの割には、結構高い設定になっているよ。おそらく日本とそんなに変わらないと思いますよ。」


山田「そうなんですね。」


僕「ちなみにインドネシア語で、値段が高すぎっていうのは、マハール スカリっていうんだよね。」


山田「マハール スカリですね。ちょいちょい酒井さんが、インドネシア語を教えてくれるので楽しいですよ。俺。」


山田のそういったなんでも興味を示すところが、僕は好感が持てる。若いって好奇心旺盛でうらやましく思う。


僕も大学生の頃は、なんでも興味を持っていた気がする。若かった僕には知識も経験も足りなかったんだろう。少し焦っていたのかもしれない。そのころは、僕は吸収できるものは、なんでも知識として吸収しなきゃっと思っていた。その頃のことを、山田を見ていると僕は思い出す。


僕と山田は、店内をウィンドウショッピングしながら散策をした。


僕「山田君、店内はこんな感じですよ。」


山田「日本と変わらない感じですね。値段の設定も置いてある商品も。ただ、日本で買うよりは、若干安いのかなって思いますけど。」


と、僕と山田の二人は歩きながらイタリアンのお店へと向かった。


目的のイタリアンの店はといえば、先ほどカフェタイムをしたスターバックスコーヒーショップの並びにある。BEACH WALKの入口寄りで、入って一番手前に位置する。

僕と山田は、その店の入口で席へ案内されるのを待った。若い女性の店員が僕たちの方へ近寄ってきた。


店員「いらっしゃいませ」と日本語を話す女性店員に席へ案内された。


店員「お席は、好きなところへお座りいただいて結構です。まだ席は十分にございますから、問題ございません。」


僕「そうですね。できれば、オープンテラス席がいいんですけど、席はありますか。」


店員「はい、ございますよ。こちらの席は、いかがでしょうか。」


と、店員は眺めの良い夜の雰囲気が味わえる席へと、僕と山田を案内してくれた。


店員「お客様は日本の方ですか。」


僕「はい。」


店員「この席でいかがでしょうか。」


と通された席は、オープンテラス席で路面に面し、バリ島の夜の喧騒が伺える景色のいい席であった。


山田「酒井さん、この席、いい感じじゃないですか。景色もいいし、丁度、店内からのクーラーの効いた空気と、クタビーチからの夜風が混じった感じで涼しいですよね。」


僕「そうだね。いい席ですね。ラッキーですよ。」


と、僕と山田は、席に着いた。籐でできた南国リゾート風のソファとバンブーでできたテーブルが、このバリ島の夜の風景に溶け込んでいる。間もなくすると、店員がメニューを持ってきてくれた。


店員「お待たせいたしました。こちらがメニューです。ご覧いただき注文が決まりましたら、およびくださいませ。」


僕「山田君。料理、何にしますか。」


山田「そうですね。メニューをちょっと見てもいいですか。」


僕「もちろんですよ。どうぞ。こちらがドリンクのメニューで、この分厚いメニューがフードのようですよ。」


山田は、僕が渡したメニューをじっくりと見始めた。


山田「酒井さん、俺、決まりました。ドリンクはパイナップルジュース、ミールはボンゴレパスタとソトアヤムにします。」

僕「そうだね。僕はガバジュースとシーフードパスタ。それとサテにしますね。」


山田が店員を呼んでくれた。


山田「オーダーをお願いします。パイナップルジュースとガバジュース。ボンゴレパスタとソトアヤム、シーフードパスタとサテのセットでお願いします。」


自ら率先して山田が店員へオーダーしている姿を見て、僕は少しだけうれしくなった。山田がなんだか大人びて見えたからだ。


僕が初めて山田に会った時は、大学へ入って間もないころだったため、まだまだ右も左も世間のことはわからず、初々しく見えた。まぁ、今でも素直でいい子なんだけれどもと思った。


山田「酒井さん、バリ島って本当にいいところですよね。俺、マジで気に入っちゃいましたよ。滞在日数の残り僅かになりますが、まだまだバリ島を楽しんじゃいます。」


僕「よかったですよ。山田君がこんなにも気に入ってくれて。」


山田「今日行ったブサキ寺院やランプヤン寺院も素晴らしかったし、バリ島の素の生活感にも少しだけ触れることができた感じがしますよ。なんたって氏寺へ参拝できたことは、俺にとって、超貴重な体験でしたよ。それにバリアンにヒーリングしていただいたことは本当に貴重な体験でした。俺一人でバリ島へ来ていたら、絶対にバリアンのヒーリングなんて受けてなかったですよ。」


僕「明日は、バリ島の山間部へ行ってみましょう。ブドゥグル地区のパワースポット巡りをしましょう。山田君はどちらか、行きたいところはありますか。遠慮なくいってくださいね。僕と山田君の仲なんだから、遠慮は不要ですよ。クタと反対にあるバリ島でいうところの北側には波が穏やかなビーチなんかもありますよ。」


山田「了解です。特に行ってみたいところってよくわからないんですよね。というか酒井さんについて行ったら、まず、間違いないと思いますから。俺は、酒井さんの金魚のフンのようにくっつき虫でついて行きます。」


僕「了解です。明日は少しひんやりする山間部へ行ってみましょうね。」


と、明日のスケジュールの相談を僕と山田がしていると、僕たちがオーダーした料理が運ばれてきた。先ほどの日本語を話す女性店員が運んできてくれた。


店員「お待たせいたしました。ご注文の料理をお持ちいたしました。」


僕「ありがとうございます。どの料理もおいしそうですね。」


店員はそれぞれの料理をテーブルにおいてくれた。


店員「パスタは取り皿をこちらに置いておきますね。」


僕「ありがとうございます。二種類のパスタが味わえますね。山田君。」


山田「実は俺、酒井さんがオーダーされたシーフードパスタもすごく気になっていたんですよ。」


僕「じゃ、丁度、良かったですね。」


店員「ご注文のお品はこちらでよろしいですか。」


僕「料理を食べ終わったら、メニューを持ってきていただけますか。デザートもいただきたいので、よろしくお願いします。」


店員「かしこまりました。お客様はいつまでバリ島に滞在なんですか。」


山田「残り9日ですよ。まだ、しばらくは、俺たちはバリ島へいますよ。」


店員「お客様は、しばらくバリ島へ滞在されるんですね。」


僕「今回は時間がゆっくり取れたので、バリ島を思いっきり楽しんじゃいますよ。」


店員「私はバリ島の大学で日本語を学んでいます。日本人は最近、バリ島へ来る人数が減ってきているんですよ。最近では、インド人や中国人が、もっぱら多くなってきていますね。」


山田「そうなんですね。今やインド人、中国人はどこの国へ行ってもたくさんいますからね。」


僕「最近、インドの方も結構見られていますね。」


店員「そうなんですよ。インドの方も結構観光へいらっしゃっていますね。」


山田「バリ島ってすごくいいところですね。インドも宗教はヒンドゥー教ですから、なじみやすいのかもしれませんね。」


店員「ありがとうございます。バリ島は、海外でも安全なところなのでゆっくりとくつろげますよ。」


僕「本当にその通りですね。バリ島でおすすめのディープなスポットってありますか。」


店員「夜にってことですか。」


僕「いえいえ、夜にはこだわりませんよ。あまり観光客が行かないような隠れた観光スポットなんかあればと思いまして。」


店員「それじゃ、明日でも時間があれば、オールドバリニーズの自宅訪問なんかどうですか。なかなか一般の観光客は行きませんからね。昔ながらのバリ島の雰囲気を味わうにはいいと思いますよ。」


山田「オールドバリニーズの家ですか。ちょっと興味がありますね。」


僕「じゃ、山田君、明日、ブドゥグルに行く前にそちらへも立ち寄ってみますか。」


山田「でも、どうやってその家を決めるんですか。」


店員「実は、観光用に自宅を開放しているバリ人もいるんですよ。そちらにアポを取りすることができます。私の知り合いのバリ人もそう言って観光客へ、昔ながらのバリの人々の生活様式を見ていただけるようしている人がいます。良ければ、電話してみますか。」


僕「是非、よろしくお願いします。」


山田「店員さん、ぜひともよろしくお願いします。」といって店員は、携帯電話でバリ人の友達にその場で電話をし始めた。


店員「明日なら、大丈夫って言いていましたよ。こちらが住所です。観光料は気持ち程度を渡していただければ大丈夫です。特にいくらって決まっていませんから。10000ルピアぐらいでいいと思います。住所をこちらの紙に書いていますので、ドライバーへ見せていただければわかると思います。」


店員は、僕へ住所を書いた紙を手渡してくれた。


店員「私は仕事に戻ります。後程、デザートメニューをお持ちしますね。それではごゆっくりとお食事を楽しんでください。失礼いたします。」


僕「よろしくお願いします。」


山田「酒井さん、すごいですね。またまたあっという間に決まっちゃいましたね。さすが酒井マジックですよ。」


僕「これも何かの縁なんでしょうね。こんなにお店がたくさんある中で、たまたまこの店を選び、この時間にお店に入ったからこそ、先ほどの店員さんとも、めぐり会えたんですからね。少しでも順番が入違っていたら、あの店員さんも他のお客様の対応をしていたでしょう。」


山田「酒井さんの言う通りですね。本当に不思議ですね。これも神様の棲む島だからでしょうかね。」


僕「ゴッドマジックかもですね。」


そんな会話をしながら、僕と山田は運ばれてきた料理に舌包みをうち始めた。


山田「酒井さん。このボンゴレ、超うまいんですけど。酒井さんもいかがですか。取り皿にお取りしますよ。」


僕「山田君、気が利くね。ありがとう。」


山田は、ボンゴレパスタを僕に取り分けてくれた。気が利く利かないというのは、その人の生まれ持った性格なのだろうか。それとも育った環境なのだろうかと僕は考えていた。山田を見ている限りでは、その両方が当てはまるような気がした。


僕「明日のオールドバリニーズの自宅拝見って、なんだかおもしろそうだよね。何か新たな発見があるかもですね。」


山田「楽しみです。どんな体験ができるのか本当に楽しみですよ、俺。ところで、酒井さん明日のドライバーはどうしますか。」


僕「そうだね。後でアグン・コテージへ戻った時にでも、フロントに相談してみましょうかね。」


山田「そうですね。」


僕と山田は、再び食事を始めた。僕をバリ島の夜風がそよかにまとってくれる。この感覚はどこかで感じたような気がした。


僕がふと山田を見ると、山田の喉のあたりに、なんだかコバルトブルーの少し薄いオーラの色が出ているように感じ取れた。そういえばオーラのコバルトブルーの色といえば、情が深く、人思いということだとバリアンは言っていたことを思い出した。まさに山田の性格そのものを表しているように思えた。


山田のおいしそうに食事をする様子も僕は好きだ。本当にいい子なんだなって思える。


山田「酒井さん、このパイナップルジュースは果汁たっぷりで、善玉菌を活性化してくれそうです。」


僕「僕のこのガバジュースも食物繊維たっぷりですよ。こんな自然の恵みいっぱいの野性味あふれた食材が、僕たち生き物にはとても必要なんですよね。」


山田「食べ物からもバリ島のエナジーを取りいれているような気がします。バリ島で育った野菜を食べていると、その土地のエナジーを体内へ取り込めますからね。」


僕「その通りです。その土地のエナジーを吸収した食べ物を体内に取り入れることで、僕たちの体の中へその土地の栄養とエナジーも取り入れることができるんですよね。そのことを昔の人たちは知っていたんでしょうが、今の現代人はそういった食べ物への感謝、自然の恵みへの感謝が薄れてきていますよね。僕たちが鶏肉や魚などの動物性たんぱく質を摂るということは、命をいただいているってことですからね。食べ物への感謝は本当に必要だと思います。」


山田「なんだか寂しいですよね。」


僕「でも、明日行くオールドバリニーズのお宅拝見で、なんだかその意味が分かるような気がします。」


山田「その意味ってどういうことですか、酒井さん。」


僕「そうですね。おそらく古い様式で昔ながらのライフスタイルを送っていらっしゃるバリ人の方は、自然への感謝を大切にしていると思うんですよね。そのライフスタイルから何か僕と山田君が感じ取れるヒントというかこれから先の生きるための何かを感じ取れるような気がするんですよね。」


山田「酒井さんの言われるようにそうですよ、きっと。」


僕「僕と山田君の感性は、すごく似ているしバリアンからも言われたように、お互いの縁の深さもありますから、僕と同じように山田君も何かを感じ取れると思いますよ。」


山田「俺もそう思います。なんだか大切で、でも今忘れている感情に出会えそうに思えます。酒井さんと一緒ならば。」


僕「山田君にそういわれると、僕の魂もすごく喜んでいるように思えます。」


僕と山田は、お互いの縁の深さを言葉に表し確認した。そんな会話をしていると、あっという間に時間が過ぎ、僕たちの食事も終わろうとしていた。


そのタイミングで先ほどの店員が僕たちの席へ近寄ってき、デザートのメニューを持ってきてくれた。この心遣いにも僕は感謝したいと思った。


店員「お客様、お食事は終わりになりましたか。デザートのメニューをお持ちいたしました。」


僕「ありがとうございます。食事は終了しました。ドリンク以外を下げていただいても大丈夫ですよ。」


と、僕は店員に片づけを促し、デザートのメニューを受け取った。


山田「酒井さん、食事の後は、やはりデザートは必須ですよね。」


僕「もちろん、デザート好きな僕としては外せないですよ。」


二人のこういった嗜好も同じというところには、僕はすごく親近感を覚える。これがやはり縁というものなのだろうか。そういえば、バリ島へ向かう前に友人の吉野に言われたことを思い出した。吉野は、僕に今回も山田と一緒にバリ島へ行くことになることや、マルチンの供養についても、バリ島で僕と山田との出合いの意味なども分かると言っていたが、まさにその通りになっている。


改めて僕は吉野の能力に完敗した。吉野にしてもマルチンにしても、今回出会っているエディ、ヘルマワンにも皆何かしらの縁があって、そのタイミングで出会えたことに、本当、神様ありがとうと伝えたい。


今回のバリ島渡航では、いろいろな出会いが新たに始まった。当初、マルチンの供養のためだけだと思って、バリ島へ来たが実は、そこには、今後の酒井拾膳の新しい未来への導きもあった。あと、僕自身でできる過去の人たちへの供養となったのであれば、それはそれで幸いであった。今回のバリ島渡航は今までにない思い出となることであろう。僕は今回のバリ島題材の作品「Pulau Bali(出会いの意味)」をここにて終わりとしたい。帰国して、日本での日常生活へ間もなく戻るが、また、来年にでもバリ島へ訪れたいと思う。それと山田といつまでも一緒にいたいと僕は改めて認識をした山田との旅であった。



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Pulau Bali(出会いの意味)2020年 有野利風 @Arino_Toshikaze

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