ときどき、ドキドキしていたい!

 健太はの隣に、佇んでいるを見て驚いた。

 まさか、のっぺらぼうと浮気をしているのではないかと。

 すると、ろくろ首の彼女が健太をみて、首を延ばしてきた。

 健太の首にまとわりつくように。


「大丈夫か?」


 健太が言うと、は、低声こごえで、「うん」と頷いた。


「最近、キレイになったね?頼むから、浮気なんかしないでくれよ」

「うん」


 その二人の会話を耳にした未知子は、会話ができるのは羨ましいなとおもった。

(私の、のっぺらぼうさんは、お口がないけど、無口だけど、優しいのよ)

 同時にそう思った。

 負け惜しみでない。それに、早くニックネームをつけてあげようと決めた。


 少年たちは自転車を投げすてたまま逃げ去っていた。

 未知子が近づくと、のっぺらぼうのカレは両の手を広げて迎えた。


 ちらりと、健太が二人をみた。

 何も言わない。

 ぺこりと、未知子が二人に会釈をした。

 何も言わない。

 

 そのまま、二組のカップルは、右と左に分かれて歩き出した┅┅。


 未知子がカレに言った。

「いろんなカップルがいるね┅┅」


 すると、のっぺらぼうのカレはリズミカルにからだをゆすった。

 カレは思った。

(そうだよな、告白するにも、口がないんだから、言えるわけないし)


 そんなカレの横顔をじっと見た未知子はおもった。

(やだ、大人ニキビ!のっぺらぼうだから、よけいに目立つし。お手入れしてあげなくっちゃ!)

 そして恥ずかしそうに囁いた。


「ねえ、今夜、うちに泊まる?」 


              ( 了 )  

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橋のたもとで。 嵯峨嶋 掌 @yume2aliens

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