雪女というとアヤカシの中でもちょっと怖い感じのイメージが多いと思います。
しかしこの物語の中の千冬ちゃんは今どきの普通の女の子。
しかもアヤカシとのクオーターとあって、ほとんど人間みたいな女の子。
まぁ感情が高ぶると雪女らしい能力を発揮したりするんですが。
そんな女の子が嫌な思い出ばかりの都会から一人、田舎の学校にやってきます。
そこで新しい友達、気になる男の子、なんかカッコいい先輩やらに囲まれて徐々に新しい生活を楽しんでいきます。
しかも何の因果か妖怪研究部にまで入ることに。
という具合に千冬の冷えた心を周りが暖かく溶かしていきます。
しかし物語はそれだけで終わるはずもなく、やがて彼女に大きな試練がやってきます。
その先は自分で読んでもらう事として。
なんといっても作者らしい魅力的なキャラクターたち。
そして読み手を惹きつけて離さないストーリー運び。
読み終えた後になんとも幸せな気持ちになれる読後感。
そういったものが今作もいかんなく発揮されています。
私がこの作者さんでいつも感心するのは、しっかりと書かれた人の心の在り方。
主人公の丁寧な心理描写だけでなく、人の嫌な面、人が持つ悪意、そういったものまでキチンと踏み込んで書いているのがなによりの魅力ではないかと思いました。
まぁとにかく面白い物語でした。
ぜひ読んでみてください!
その時の出逢いは偶然だった。
冷房の故障したバスの中で、溶けそうになっているところに、手が差し伸べられた。いえ……、保冷剤が差し出されたのだ。
物語の序盤から、ヒロインが実は……。あっ! と、言わせられるのはわたしだけじゃないはず。
もう、最初から、そんなキャラクターの設定が素敵なのだ。ヒロインの言動の全部がかわいい。
そんなヒロインが、様々な苦悩の末に、田舎に住む大好きなお婆ちゃんを頼って、この時期に転校してきた。
そこで、繰り広げられる、理解ある優しい友人たちとの学校生活は、自然と過去の疵を癒してくれるが、やはり、理解できない人たちは、どこにもいて……。事件が勃発する。
ヒロインは、その苦難を、どう乗り越えていくのか……。ハラハラしながらページを捲った。どうしても、幸せになってほしいと願いながら……。
でも、ラストは、感動すらする。読めて良かったと思った。
素敵なアオハル物語である。
雪女のお話は、皆様ご存知かと思います。
雪女に一人だけ救われた漁師が美しい嫁を迎え、口止めされていたにもかかわらず、雪女について語ってしまう……しかし実は嫁こそが彼を助けた雪女で、約束を破った夫の元を去ってしまうというストーリーです。
あの結末は、私にとって悲恋の物語として胸に強く残っています。
そのため私の中では、雪女というと薄幸のイメージが付き纏いがちでした。
この物語の主人公、千冬にも、暗い過去の影があります。
なのでずっとハラハラ心配しながら見守っておりましたが、そんな不安は杞憂に終わりました!
優しい人達に囲まれて、友達付き合いに部活動に恋に、千冬は存分にアオハルを楽しんでくれます。
こんなにあたたかいと溶けてしまうんじゃ……と逆に心配してしまうくらいに(笑)
しかし、順風満帆とはいきません。
重い過去や不本意な悪意にさらされ、時に大きく傷付くことも。
けれど皆の手に支えられ、千冬は乗り越えて成長していくのです。
もちろん、甘くて切なくてキュンキュン不可避な恋からも目が離せません!
まだまだ寒い日が続きますが、この物語を読んで、体だけでなく心もほっこりしてみませんか?
アオハルは春だけじゃない!
雪女の紡ぐあたたかなアオフユを味わってください。
普通ならば、雪とは人を冷たく悲しくさせるものかもしれません。この作品に並ぶタグも、「妖」「雪女」「いじめ」と、あの雪女伝説を思い起こさせる悲劇のイメージを連想させます。
しかしながら、この『アオハル・スノーガール』は吹雪が吹き荒れた次の日のような、穏やかな陽射しに満たされた冬の晴れ間を思い起こさせる作品です。
物語のスタートは黒髪の綾瀬千冬が心に傷を抱え、一人で逃げ出すように引っ越してくる、バスのシーンから始まります。雪女のクォーターである彼女が何を抱え、何から逃げて来たかが、ストーリーを通して追々に語られてゆきます。
真夏の茹だるようなバスでの、岡留君との出会い。転校した学校で出来た、クラスメートの友達。引っ張られるように入部した、部活の先輩。
その人たちとの心の交流を経て、移り変わってゆく少女の成長を、ゆっくりと穏やかに描き出す事こそが、この作品の本質にあるのですから。
人の真心に寄り添った暖かなエピソードの数々、作者さまの優しい心がギュギュッと凝縮した「優しさが溢れた物語」、あなたも読んでみませんか?(^ω^)