第4話

父が弟に眼で合図をし、二人が再び両側から俺をかかえた。


そして階段下に連れて行かれた。


そこにあるやけに分厚い扉を開けると、そこには下に下る階段があった。


――普通の家に見えたのに、なんでこんなものがあるんだ?


以前の俺なら知っていただろうが、今の俺にはわからない。


俺は押されるようにして階段を下りた。


俺を下ろすと父と弟は階段を上って行った。


見上げると老人の男が顔を出して言った。


「そこには生活に必要な最低限のものはある。食べ物は運んでやるから、あれのありかを言う気になったらいつでもそう言え」


そういうと俺の衣類を上から投げ入れて、扉を閉めた。


真っ暗になり、そして鍵がかかる音がした。


真っ暗だが、俺は扉が閉まる前に階段横にスイッチがあるのを確認していた。


点けるとけっして明るいとはいえないが、周りの様子はわかる。


トイレ、シャワー、ベッド。


たしかに最低限の生活はできそうだ。


俺は考えた。


とにかく俺は、俺の身体とあれと呼ばれるものを落としたがために、ここに閉じ込められたのだ。


それにしてもこの場所はなんなんだ。


あれとはいったいどんなものだ。


そして一番大事なことだが、俺はいつまでここにいればいいのだ。



       終

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あれ ツヨシ @kunkunkonkon

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