最終話 「あ、わたしが出るよぉ」 そっちは任せて作業に戻った。

※注意

 この話は少し長めになってます。


――――――――――――――――――


「おじゃましまーす!」

「おじゃまします」

「はいはーい」


 十二月二十五日土曜日。

 クリスマス当日であり、クリスマスパーティー当日。

 朝から晩まで遊び尽くそうということで、全員午前のうちに集合する。


 その最初のお客さんがやってきた。

 のだが……。


「あれ? うららは?」

「麗お姉さまは置いてきました」

「昨日気分が高揚したままでなかなか眠れなかったみたいです!」

「遠足前の小学生かよ……」


 やってきたのは七海ななみちゃんとかえでちゃんの二人だけ。

 麗は一緒に来ていなかった。


 昨日、イルミネーションを見た後、普通に麗を家まで送ったのだが……。

 思い返したりしてくれてたんだろうか。

 麗が来た時にうまく顔見れなくなるから考えないようにしよう……。


「荷物預かるよ。この前と同じ部屋に置いておく」

「いえ! アタシたちでやりますよ!」

「場所はわかるので大丈夫です」

「そう?」


 それならということで俺は二人に任せてキッチンに戻る。


ななちゃんと楓ちゃん?」

「そうそう。麗は置いてこられたらしい」

「え、なんでぇ?」

「寝れなかったんだと」

「思い返しちゃったんだねぇ」


 ベッドでゴロゴロする麗が脳裏に浮かんでくる。

 デートを思い出して悶える麗……。

 あかん。かわいい。


「はい。これ混ぜてぇ」

「お、おう」


 今は料理の途中だった。

 昼用の料理と、夜に作る料理の仕込み。

 その二つを心優みゆと一緒に作ってたんだ。


真莉愛まりあちゃんも昼過ぎからなんだよな?」

「そう言ってたよぉ」

「じゃあこれくらいでいいか」


 真莉愛ちゃんと千垣ちがきの二人は、昼過ぎからの参加という話だった。

 だから昼は俺と心優、麗に七海ちゃんに楓ちゃん、そして琴羽ことはの六人というわけだ。


「あ、手伝いますよ!」

「楓もお手伝いします」

「いいよいいよ。ゆっくりしてて」


 麗仕込みの二人が手伝ってくれるととても助かる。

 でも、お客様に手伝ってもらうのはいかがなものかと。


「ダメですよ康太さん! みんなで楽しむパーティーなんですから!」

「そうです。お手伝いします」

「そこまで言うなら……」


 なんていい子たちなんだろうか……。


 そう言った七海ちゃんと楓ちゃんは何も言わなくてもテキパキと動いてくれる。

 特に、七海ちゃんは心優と息が合っている。

 あの後も連絡とか取り合ったりしてるらしいからかな。きっと、俺の知らないうちに仲が縮まったのだろう。そういえば、さっき七ちゃんって呼んでたな。

 いつの間に……。


 そんな光景を眺めていると再びチャイムがなった。

 今度は誰だろう。


「やっほーこうちゃん!」

「おーっす琴羽。荷物はいつものとこで」

「はーい!」


 琴羽は大丈夫なので、またまたキッチンに戻る。

 キッチンでは三人がうまく連携を取って料理を続けていた。

 正直、俺の入る余地がないほどだ。


「みんな優秀すぎだよ……」

「いい匂~い。あれ? ららちゃんは?」

「昨日寝れなかったみたいで、置いてきたらしい」

「デートのことでも思い出してたのかな?」


 琴羽までそんなことを言う。

 俺はどういう顔してたらいいんだよ。


「あ、誰か来たね」

「出ます出ます」


 再びチャイムが鳴ったので、また玄関に戻る。


「お邪魔します」

「ほいほい。荷物持つよ」

「ありがと。妹二人だけ先に来させてごめんね」

「全然。むしろ手伝ってもらっちゃって」


 即戦力すぎて頼もしいのなんのって。


「えっと……なかなか眠れなくて……」

「それは聞いてるよ」

「デートのこと……思い出してドキドキして……」


 心優と琴羽が言ってたことは大当たりだったということか。

 そんなことを恥ずかしそうに言われると、こっちまで恥ずかしくなってしまうし、思い出してしまう。

 さらに言えば妄想してしまう。

 イルミネーションを見た後、麗を家に送ったのだが、もしそのまま朝まで一緒だったら……。

 いや待て待てそれはまだ早い。


「た、楽しかったよな」

「うん……」


 会話が途切れてしまう。

 なんて言えばいいんだろうか。


「ち、千垣と真莉愛ちゃんは午後から来るって」

「そ、そうなんだ」

「今は、夜の仕込みと昼ご飯作ってるとこ」

「早くない?」

「仕込みが多くてねぇ」


 段々と会話の調子が戻ってくる。

 あんまりドキドキしたようなことは慣れてないけど、やっぱり麗と一緒にいると落ち着くし安心する。

 いつもの俺に戻るのもすぐだ。


「出前頼むんじゃなかったの?」

「そう思ったんだけど、心優が作りたいって言って……」

「さすがねぇ……」

「ま、みんなで作るのも楽しいかなって」

「それもそうね」


 実際心優たち三人は、楽しそうに話しながら料理を作っていた。

 今はきっと琴羽も混ざって料理をしていることだろう。


「じゃあ、あたしも手伝うわ」

「助かるよ」


 合流した俺たちは、みんなで昼ご飯を作り、夜の仕込みまで終わらせた。



※※※



「ほい」

「はい」


 昼食後。

 水洗いなどを俺がして、麗が食器を拭いてくれている。

 心優と七海ちゃんと楓ちゃんは三人でテレビゲームを始めており、琴羽は千垣が駅に向かっているとのことで迎えに行った。


「まだ昼だからかしら。あんまりクリスマスパーティーって感じがしないわね」

「わかる。俺もなんか夜にってイメージだ」


 パーティーは別に夜だけに限らないだろうが、なんとなく夕方とか夜から始まるイメージがある。


「でも外は雪景色だぞ」


 昨日降った雪が夜のうちに積もり、今は晴れているが外は銀世界。

 雪の白に染められ、真っ白の世界が続いているかのように思わせる。


「これから積もり続けないといいけどね」

「そうだよなぁ」


 今はまだそれほどでもないが、また夜には降ると言われていた。

 これからさらに降り続けるだろうし、歩くのが困難になっていく。

 そうすると初詣とか大変なんだけど……。


「こればっかりは仕方ないな」


 俺たちにはどうすることもできない問題だ。


「お、誰か来たな」

「ここは任せていいわよ」

「ありがとう」

「あ、わたしが出るよぉ」

「じゃあ頼む~」

「はぁい」


 ゲームを中断した心優が代わりに行ってくれたので、俺は皿洗いを続行する。

 話し声がうっすらと聞こえてくるが、この声はきっと真莉愛ちゃんだろう。


「お邪魔しますです」

「いらっしゃい真莉愛ちゃん」


 心優の陰に隠れながらもやってきたのはやはり真莉愛ちゃんだった。

 たぶん、心優から七海ちゃんと楓ちゃんの話を聞いたから隠れているのだろう。

 麗とは学園祭の時に会ったが、七海ちゃんと楓ちゃんは初対面だ。

 人見知りの真莉愛ちゃんには相手が誰であろうと厳しいことに変わりはない。


「初めまして! 藍那あいな七海です!」

「藍那楓です。よろしくお願いします」

「に、庭瀬にわせ真莉愛です。よろしくお願いしますです……」

「まりぃちゃんもゲームしよぉ」


 今度は四人でゲームを始めた。

 あの調子ならそっとしといても大丈夫だろう。


「大丈夫そうね」

「ああ」


 麗も同じことを思ったようだ。

 皿洗いを終えて四人がゲームをしているのが見える位置に麗と並んで座る。


「ああ! 待ってよ真莉愛っち!」

「ま、待てませんです……! 七海さんを倒しますです!」

「真莉愛お姉さま、助太刀します」

「ちょっと楓!?」

「あ、七ちゃん負けー!」

「ありがとうございますです楓さん」

「すかさずここで真莉愛お姉さまを裏切ります」

「あ! 負けちゃったです……」

「ああ……わたしも巻き込まれちゃったぁ」

「楓の勝利です……!」


 渾身のドヤ顔の楓ちゃんが今回も勝利を収めたらしい。

 ちなみに、皿洗いの時からチラチラと見ていたが、楓ちゃんはずっと一位を維持している。

 最初はみんなどこか譲っているようなところを見せていたが、段々と余裕が無くなってきたようで、楓ちゃんにも容赦なく攻撃している。


 楽しそうでなによりである。


「お、戻ってきたかな」


 玄関の扉が開くと音と、かすかに「お邪魔します……」という声が聞こえた。


「ただいま!」

「お邪魔します……」

「おかえり琴羽。いらっしゃい千垣……なんか疲れた顔だな」

「藍那か神城かみしろに迎えに来て欲しかった……」

「そんなこと言わないでよー!」


 一体琴羽は何をしたというのだろうか。


「あ、まりぃちゃん。この人が千垣紗夜さよさんだよぉ」

「千垣紗夜です……。よろしくね……」

「に、庭瀬真莉愛です……」


 再び真莉愛ちゃんは心優の後ろに隠れる。


「真莉愛ちゃんだね……。私のことは気にしないで遊ぶといい……」

「まりぃちゃん」

「は、はいです」


 七海ちゃんと楓ちゃんが千垣と少し話してから、四人はゲームに戻った。


「千垣、荷物はその辺に置いてくれ」

「悪いね……。あまり長くいることもできないんだ……」

「気にするなって。来てくれて嬉しいよ」

「私も楽しみにしてたよ……」


 真莉愛ちゃんの荷物もここに置いてあるので、千垣はその近くに荷物を置く。

 真莉愛ちゃんと千垣は泊まらずに帰るので、荷物は少なめなのだ。


 泊まるという話はもともとなかったのだが、急に浮上し、この前と同じメンバーが泊まることになっている。

 部屋割りもたぶん同じ。


「あ、そうだ康ちゃん、キッチン借りていい?」

「いいけど、何するんだ?」

「お菓子作ろうと思ってて~」

「そういえばそんな話してたわ」


 すると、琴羽と麗の二人が持ってきた材料を取り出した。

 二人で一緒に作ろうと話していたのか。

 羨ましい。……何を作るんだろう。


「手伝おうか?」

「ことちゃんとやるから大丈夫よ」

「どーんと任せて待っていたまえ~!」

「そうか」


 麗と一緒に作業ができないことを少し悲しみつつも、相変わらず麗と琴羽の仲も良くて嬉しくもある。


「なかなかラブラブみたいだね……」

「何が」

「神城と藍那だよ……。さりげなく糖分を押し出すのはこちらからしてみると苦しいよ……」

「糖分? お菓子の話か?」

「違うよ……」


 千垣の言っていることはよくわからないが、俺と麗がイチャイチャしてるとか言いたいのだろうか。

 特にそんなつもりはないのだが、そんな風に見えてるのなら嬉しい。


「昨日のデートはうまくいったの……?」

「お、聞いちゃう?」

「聞かない……」

「そんなこと言わないでくれよぉ」

「そうやって調子に乗ってるとそのうち捨てられるかもよ……」

「ごめんなさい調子に乗りました」


 惚気てるやつうぜーとかリア充爆発しろとか、そんなことを思っていたけれど。

 いざ自分がそっち側になると惚気たくて仕方なくなっちゃうんだよな。

 今まで爆発しろとか思っててごめんな世界のリア充たち……。


「冗談だよ……。冗談には冗談で返さないとね……」

「冗談が重いっすよ千垣先輩……」


 ずっしりと響く冗談はご遠慮願いたい。


「お菓子できたよ~」

「食パンで作ったラスクよ」

「お~!」



※※※



「おぉ……。すごい豪華だね……」

「本気出しちゃいましたぁ」


 みんなの手伝い(千垣以外)もあって完成した夕飯の数々を並べてみる。

 心優が自信満々に言うのも当然で、ものすごいクオリティの高いものがテーブルに所狭しと並んでいる。


 それを見た千垣が目をキラキラさせながらカメラを取り出す。


「写真を撮っても……?」

「いいですよぉ」

「ありがたき幸せ……」


 弁当を渡している昼休みも、こうして喜んでいる姿は見てきたが、ここまで喜んでいる千垣を見るのは初めてだ。

 目をキラキラさせながら次々と料理を写真に収めている。


「すごい喜んでるわね」

「量にも喜んでるんじゃないかな……」

「紗夜ちゃんかわいいねー!」


 麗は呆れ、琴羽はなぜか喜び……。

 なんだかカオスな空間だ。


 まぁおいしそうだし、おいしいことは間違いないだろうが……。


「これ、食べきれるのかな……」

「楓も頑張ります」

「みぃちゃんすごい……」


 手伝っていたはずの七海ちゃん、楓ちゃん、真莉愛ちゃんは実際に並んだ料理を見て軽く絶望している。

 量が量だからその気持ちもわかる。


「まぁ休憩しながら食べればいいと思うよ」


 無理に全部食べる必要もないし、とっておいてもいい。

 なんなら持って帰ってもいいわけで。


 とりあえず、みんなで手を合わせ、いただきますと言ってから食べ始めることに。

 食べ始めてみれば盛り上がるもので、


「このパン手作りなの?」

「はい! どうですかぁ?」

「おいしいよ~みっちゃん~!」


 麗と琴羽がパンを手に取り口にする。

 手作りのパンは初めてだったと思うが、とてもおいしくできている。

 ふっくらしていてほどよく甘く、中の具材とよく合う。


「ゴーヤってこんなにおいしいんだ……」

「心優お姉さますごいです」

「それね、この前作ってみたのぉ」


 ゴーヤチャンプルーも再び作っていた。

 七海ちゃんと楓ちゃんが驚きつつも食べている。

 真莉愛ちゃんも恐る恐る食べていた。


 千垣は……。


「もぐもぐ……」


 なんかいろいろ食べている。


 ある程度みんなお腹が膨れてきた辺りで、麗がこんな提案をする。


「もうプレゼント交換しちゃう?」

「あ、そうだな。時間も時間だし」


 時間的にはもう夕方くらいだ。

 千垣と真莉愛ちゃんはあんまり長く居れないと言っていたし、丁度いい頃合いかもしれない。


 それぞれ用意したプレゼントを手に持って自分の席に着く。


「で、どうやって回してくんだ?」


 誰も考えてなかったな……。


「なら、私が歌うよ……」

「頼む」


 プレゼントをとりあえずランダムに配り、そこから時計回りに回していく。

 千垣の綺麗な歌声が耳にすっと入ってくるので、プレゼントを回し忘れそうになる。


 ある程度回ったところで、千垣が歌を止めた。


「誰か自分のが回ってきた人はいない……?」


 誰もいないようだ。


「なんか、豪華そうだけどいいのっ?」

「あ、それはわたしのだよぉ」

「楓のもすごそうです」

「それは俺のだな」


 七海ちゃんには心優が買ったもの、楓ちゃんには俺の買ったものが送られたらしい。


「これは、どなたのです?」

「それは私だね……。こっちは……」

「それは私のだよ紗夜ちゃん!」

「えぇ……」

「ちょっと!?」


 真莉愛ちゃんは千垣からの、千垣は琴羽からのプレゼントか。


「俺のは……」

「あたしのね」

「麗お姉さんのはうちです」


 俺のが麗、麗のは真莉愛ちゃんのか。


「それは楓が買いました」

「楓ちゃん、ありがとぉ」

「じゃあ私のは七海ちゃんのだね!」

「はい!」


 心優のが楓ちゃんで、琴羽のは七海ちゃん。


「じゃあ開けてこうか」


 麗の選んだものか。

 偶然だけど、やっぱり嬉しいものだ。


「お、手袋か?」

「うん。ちょっとかわいらしいものだけどね」


 まぁこの中に男は俺一人しかいないしな。

 どっちかというと女の子っぽいものを選ぶのが普通だろう。


「わ、これクッキー? 待ってこれ手作り?」

「今朝作ったのぉ」

「すごっ!」


 心優からのプレゼントだった七海ちゃんは、手作りクッキーをもらったようだ。

 心優らしくていいと思う。


「くまさんのぬいぐるみです。かわいいです。大事にします」

「よかった」


 楓ちゃんには俺からのプレゼントで、くまのぬいぐるみだ。

 大事そうにぎゅっと抱きしめている。

 よかったよかった。


「ホラー映画……」

「それ面白かったから見てみて!」


 千垣は琴羽からホラー映画のブルーレイをもらったようだ。

 頑張れ千垣……。


「肩たたき券だぁ」

「心優お姉さまのためにいつでも馳せ参じます」

「ありがとぉ。さっそく一枚お願いします~」

「任せてください」


 楓ちゃんのプレゼントは肩たたき券のようだ。


「これはCDです?」

「お気に入りの曲なんだ……」

「千垣さんありがとうございますです!」

「喜んでもらえてよかったよ……」


 千垣から真莉愛ちゃんへのプレゼントはCDか。


「あら、CD?」

「はいです! 大好きなアイドルのです!」

「ありがとう真莉愛ちゃん」


 麗が真莉愛ちゃんからもらったものもCD。

 真莉愛ちゃんは音楽が好きなのか。知らなかった。


「それ……!」

「千垣、どうかしたか?」

「な、なんでもない……」


 麗がもらっていたCDに明らかに反応していた気がするけど……。

 もしかして、千垣も好きなのか?

 でもそれなら隠す必要もないし……。


「かわいい!」

「琴羽さんに似合いますよ!」

「ちょっと七海。康太に当たったらどうしてたのよ」

「あっ」


 琴羽が七海ちゃんからもらったのはヘアピンのようだ。

 ひまわりのヘアピンで、元気いっぱいな琴羽に似合うのは間違いない。


 まぁ麗の言う通り、俺に当たるとどうしようもないのだが……。


「康太さんごめんなさい!」

「いやいや気にしなくていいって。俺に当たってないんだし……」


 そんなに気にすることでもない。

 誰かと交換してもいいわけだし。


「次はゲームをしましょう」

「今度は負けないよぉ」

「うちもやるです!」


 楓ちゃんたちが再びゲームを始めた。

 今度は負けないと心優と真莉愛ちゃんも立ち上がる。


「七海ちゃんもほら」

「はい!」


 これはクリスマスパーティーだ。

 楽しまなくては意味がない。


「急で悪いけど、私は帰るね……」

「お、そうなのか? 送ろうか?」

「大丈夫だよ……」

「でも暗いし……」

「じゃあお願いしようかな……」


 みんなで見送りをして、俺は千垣と一緒に外に出る。


「悪いね……」

「全然。楽しめたか?」

「すごく楽しかったよ……」


 そう言って千垣は微笑む。

 表情があまり変わらない千垣の表情が動くのを見れるのはレアだ。


「ならよかったよ」


 表情が変わらない分、本当に楽しんでもらえてるか心配だったので、聞けてよかった。


「忙しくなってきたからさ、息抜きできてよかったよ……」

「忙しくなってきた?」

「最近は昼休みに空き教室にも行けなくて……」


 そういえば、いなかった日があったな。

 あの時以外は行ってなかったが、いない日が多かったんだな。


「何してるんだ?」

「それはちょっと言いたくない……」

「そっか」


 誰にでも言いたくないことはあるもんな。

 しかし、なんか恥ずかしそうにしてるのは気のせいか?


「もういいよ……。すぐそこだし……」

「そうか? じゃあまたな」

「うん……。おやすみ……」

「おやすみ」


 そうして千垣は、駅のホームに行ってしまった。

 俺は一人、自分の家まで歩く。


「ただいま」

「おかえり康太」


 家に着くと、麗が出迎えてくれる。

 おぉ……なんか、いい……。


「どうしたの?」

「家で迎えてもらえるのってなんかいいな!」

「はいはい」


 呆れたように言われるが、逆の立場になればきっと思うって。


 リビングに戻ってくると、真莉愛ちゃんがいない。


「真莉愛ちゃんは?」

「あ、康ちゃんおかえり。さっきお迎えが来て、帰っちゃったよ」

「そっか」


 見送ることができなくて残念だ。


「お風呂どうするぅ?」

「みっちゃん一緒に入ろうよ!」

「楓もご一緒します」

「じゃあ三人で先に入ってきなよ」


 元気よく返事した三人は、仲良く風呂場に向かって行った。


「すっかり仲良しだね~」

「そうね」


 琴羽と麗がくすくすっと笑う。


「本当にな」


 自分の妹と、彼女の妹が仲良くしてくれてるのはとても嬉しい。


「で、次は誰が入る?」

「ららちゃん一緒に入る?」

「入りましょうか」

「それとも……ふふふ……。康ちゃんと入る?」

「なっ!」「えっ!?」


 ニマニマと嫌な笑みを浮かべる琴羽。


 麗と……一緒に……風呂?

 だってそれって麗の裸を……。

 いや、俺も裸を……。


「……本当に入っちゃえば~?」

「そ、そんなの無理~!」

「あ、ちょっとららちゃん痛いよぉ~!」

「ことちゃんのバカー!」

「やれやれ……」


 二人が小さな争いを始めた。

 これも何度目かって感じだな。


 それにしても麗と風呂……か。

 いつか、そんな日が来るといいなぁ……。


 べ、別にいやらしい意味じゃなくてな!


「康太もなんか言いなさいよ!」

「え、あ、おぉ……!」

「ちょっと待ってららちゃ~ん!」


 でも、今はこれで……楽しいし、幸せだ。


――――――――――――――――――――

あとがき


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

結論から言いますと、


まだ続きます。


前作、前々作と違い、終わる時に明らかな伏線を残してはいませんが、新しいキャラが出たりといろいろ次回に繋がるものは残しておきました。

それらが活かされるのが次回になりますかね(笑)

今回が三作目になりますので、ここを第三章としておきましょう。

次回第四章は現在執筆を始めており、だいたい2~4か月後くらいを目途に投稿しようと思ってます。

次回タイトルはすでに決まっており、『彼女が欲しかった俺が、再びキューピッドになるまで。』です。なんとな~く察する人もいるかと思いますが、どうなるかはその時をお楽しみに(笑)


改めまして、ここまで読んでくださりありがとうございました。

続編、もしくは別の作品でまたお会いしましょう。


《五月四日 追記》

続編がまだ書きあがってません。

五月中には出せるように頑張りますので、もうしばらくお待ちください。


《五月三十日 さらに追記》

続編の件なのですが、書き直しなどをしている関係上まだ書きあがっておりません。

自分が納得できるようにしたいので、もう少々お時間をください。

遅くなってしまい、申し訳ありません。


《六月三十日 さらにさらに追記》

続編の件なのですが、書く気分になれなかったり、書き始めてもなんか納得いかなかったり、リアルが忙しかったりでまだ書けてません!

少しずつは書けているので、申し訳ありませんが、もう少々お待ちください!!


《七月三十一日 さらにさらにさらに追記》

すみません。書く時間が無くて書けてません。

あと一話なんですが、いつ書けるのか全く予想もできない状況なので、いつ投稿できるかわかりません。

必ず投稿はしますので、それまでお待ちください。

よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女が欲しかった俺が、不幸に打ち克つまで。 小倉桜 @ogura_haru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ