異世界と正面から向き合い、立ち向かった少女の運命の行く末は——。

 魔法の存在する異世界へ、別の世界から突然転移してきてしまう——転移物のまさにオーソドックスとなっている設定ですが、実際そんな事態に直面したら、転移してきた方も、受け入れる方も戸惑っちゃうと思いませんか?

 そんな疑問に答えてくれるのがこの物語です。

 魔法が発達しているが故に、技術が発達しなかった世界で、先進的な技術を持つ異世界人は一部では歓迎され、一部では敵視される。黒髪黒目の少女フレイアは、記憶を失っているが故に、異世界人としてもどこか浮きがちですが、持てる知識とその前向きさで努力し、この世界に適応していこうとしています。

 そんな彼女に心惹かれていく、同じ異世界人のコーヘイ。そして、異世界人を敵視する魔導士の筆頭である銀髪紫眼のセトルヴィードもまた、健気に頑張る彼女に惹かれていきます(踏み込まない彼に、もだもだします!)

 異世界は決して楽園ではなく、そこに生きる人々にも生活があり、葛藤や苦悩がある。そんな人と人との関わり合いが丁寧に描かれ、そうして大きな事件に巻き込まれた彼女が最後にした選択は、とても彼女らしく、それでも糸がぷつりと断ち切られるような切ないラストに呆然としてしまいました。

 やがて『マリオネットインテグレーター』などの物語へとつながっていく原点とも感じられる、ファンタジーの要素がぎゅっと詰まった一作。

 おすすめです!(続編も楽しみです!)

その他のおすすめレビュー

橘 紀里さんの他のおすすめレビュー942