『彼女いない率99%』の男子校でボッチの僕ですが、最高に気の合う可愛い彼女ができました

緒方 桃

プロローグ 最高に気の合う友達

 これは、僕と彼女が恋人同士になる、少し前のお話。


「テスト終わりくらい、家でゆっくりさせてくれよ」

「ダメです。私は今日先輩と遊ばないと、ストレスで死ぬのです!」


 六月末日の正午過ぎ。とある男子校に通う僕、愛原葵あいはらあおいは、近くの女子校に通う年下の女の子にファミレスへ連行された。

 彼女の名前は萌絵もえ。苗字は知らない。いや、意地でも教えてくれない。


「やはりこの時間で頼むものは、ランチメニューに限りますね!」

「そりゃ、コスパも良くて安いからな」

「それにしても先輩、黒縁メガネださいですね」

「黙れ。そして全国の黒縁メガネに謝れ」


 四月の中旬、あることがきっかけで出会った男子校の僕と女子校の彼女。お互い他校で何の接点もなかった僕たちが仲良くなれたことには、大きな理由がある。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「「オニオンソースハンバーグセットライス大盛りで」」

「か、かしこまりました」

「「あと、グリンピース抜きでお願いします」」


 大まかに言えば、僕たちは似た者同士である。

 好きなものも嫌いなものも同じ。趣味も好きなアニメや漫画、ラノベだって同じだ。

 だから彼女との会話は全く飽きないし、正直言ってかなり楽しい。


「キミもライス大盛りかよ。太るぞ」

「うーわっ、サイテー。レディに向かってそれを言うのはどうかと思いますけど?」

「僕は忠告をしたまでだ。どうせキミはまた体重計に乗って泣き喚くからな」

「はいはいそれはどうも。どうせ先輩は私をレディだと思ってないんでしょ?」

「そうだな。キミが僕を『男じゃなく、葵先輩です』と言うように、僕にとってもキミは『萌絵』だ」


 気兼ねなく何でも言える、唯一無二の存在にして、大切な友達。……だなんてクサいことは言えなかった。


「そうですね。先輩も私と同じように、私を『気兼ねなく何でも言える、唯一無二の存在にして、大切な友達』って思ってくれてますもんね?」

「……うるさい」

「ちょっとぉ、なんで逃げるんですか? 図星ですか? 恥ずかしくて仕方がないんですか??」

「……ドリンクバーに行くだけだよ」


 それなのに、どうしてコイツはそんな恥ずかしいこと言えるんだよ? メンタルが鋼超えてダイヤモンドだろ。


「もぉ可愛くないなぁ。そんなんじゃ彼女できませんよ?」

「それは関係ないだろ? それに恋愛したい欲求なんて、とっくに男子校で捨てたよ」

「それは私も同意です! なんか女子校にいたらすっかり無くなっちゃいましたよ~。なんででしょうね?」

「さぁ。僕らが変人だからかもな」


 もう一度言う──僕らは友達。気の合う最高の友達だ。

 お互い付き合おうとは思わないし、おそらく僕らは互いに、恋愛感情なんて毛頭も抱いてないだろう。あるのは思春期特有の、異性に抱く感情が少しだけ。


「あっ、でももし好きな人ができたら教えてくださいね? 恋愛マスターの私が相談に──」

「大丈夫だ。それなら他に頼るよ」

「え~」

「だってキミ、恋バナになるとうるさいし……」


 それに今は、他の誰かと関わらなくてもいいと思っている。

 僕が持つのは男女それぞれの気の合う友達、ただ二人だけ。それでも十分だ。


「先輩、この後どこ行きます?」

「ゲーセン」

「あとは?」

「本屋かア〇メイトにでも行こうかな」

「おー、私も同じこと考えてました!!」

「なら、決まりだな」

「はい!!」


 だって僕の過ごす時間は、もう既に充実しているのだから──。


「お待たせしました! ランチのサラダでーす」


((うわっ、ニンジン入ってる……))

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