身も蓋もないけど、二人にとって僕の気持ちなんて蛇足だよね。
――ごめんなさい。
なるほどね――と、そうやって会話を終わらせるのは、単純に僕が口下手だからだ。
頭の中ではいろいろとよけいなことを考えるけれど、それを口で伝えるのが難しい。よけいなことを言うくらいならいっそ適当に頷いて、よけいな争いを生まないようにする方がずっといい。
僕の気持ちなんて、口にしない方がずっといいのだ。
言わぬが花、沈黙は金というやつである。
というわけで、第三者がよけいな口を挟んで話を複雑化させるくらいなら、実況に努めるべきだというのが僕の考え――だった、わけだけど。
今回の件に限っていえば、友人の一世一代の告白を邪魔したくないと思ったのだ。そういうのは、野暮ってものである。たとえどんな結果になるとしても、彼の決断を僕は支持したい。
良い悪いの話ではないが――自分から告白せず、結果的に今回の状況を招いてしまった
それに……片想いを続ける夏野ちゃんにとって、秋良くんが他の女の子を好きでいるという事実は痛みを伴うものだろう。
ここらではっきりとすべきなのだ。
――僕の気持ちとは、関係なく。ここでそれを言葉にしたら、これまでの全てが嘘になるし、僕は自分のことが嫌いになるだろう。
……しかし口下手な僕はそんな考えを説明して夏野ちゃんを説得することは出来ず――状況も状況だったから、そんな猶予もなく。
行動に出た。
よく意外に思われるけど、実はラブコメを好む僕の頭にはとっさに、ラブコメにおいてありがちなシーンが浮かんだのだけど――こういう状況だからこそ、なんて想いを押し殺して――まさか、そんな大胆な真似が出来るならもっと状況は変わっていたわけで。
……やっぱり、告白に踏み切った彼を、僕は心の底から尊敬するのである。
それから、
僕もあれくらいはっきりものが言えたら良かったのに、と多少の羨望を抱いた。
「私、
唐突な第三者の登場に、開いた口が塞がらない。
……やっぱり、よけいなことは言わないに限るね。
ふたのないスクエア 人生 @hitoiki
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