2 恐ろしくリアリティのある小説です。




 1分前   恐ろしくリアリティのある小説です。 ―― 人生ひといき



 最高のエンタメ体験。小説においてのそれは、主人公への感情移入による疑似体験でしょう。主人公に共感し、その気持ちを共有する。

 この小説は、(少なくとも私にとって)感情移入の先を行く衝撃を与えてくれました。「この状況、自分だったらどうするか」ではなく、「この状況どうしたらいいんだ」という激しい動揺を覚えます。


 ありふれたラブコメ作品ですが、私にとってはまさしく真に迫る内容でした。


 以下、多少のネタバレを含みます。


 後半から唐突に鬱々とした展開になりますが、これはいわゆる吊り橋効果を狙ったヒロインの自演です。それを念頭に置いておくと安心して読み進められると思います。


 全てが明らかになった後の主人公とヒロインのやりとりは見ものです。

 とても世間は狭いなと思いました。



 ☆★★ すごい!


 |キミとの帰り道 / ながおかあね

 ★2・ラブコメ・完結済・32話・111700文字




                   ■




 ……放課後、教室に居残って俺はそのレビューを書き上げた。

 評論家を気取るわけじゃないが、客観的な評価として星は二つ。読み専としての矜持として、こればかりは譲れない。文章力などを鑑みれば二つでも多い方だろう。


 レビューを投稿し、教室を後にした。

 オレンジ色の廊下を行き、校舎を出る。


 帰り道、途中から誰かの気配を背中に感じてはいたものの、俺は振り返らず足を進めた。


 振り返るべきは――顧みるべきは、己の犯した過ち。


 あぁほんと、なんてことをしたのだろう。作者に媚びて星三つにしとけばよかったとかそういうことではなく――


 どうして、あんなものを投稿してしまったのだろう、と。


 一人だけ、最後まで付き合ってくれた読者がいた。

 なんとなく、読み始めたから最後まで読んであげようとかそんな軽い気持ちで、削除して数年も経てばきれいさっぱり忘れているだろうと――そう、思っていたのに。



読者キミを驚かせたかったんだけどなぁ」



 ……あぁやっぱり、星三つにしておけばよかったか。

 レビューを書き直すとすればそれは、俺の遺書になるのかもしれない。


 ひと気のない通学路、振り返ると――



「ねえ、なんで星二つなの?」



 俺の黒歴史よわみを握り微笑みを湛える少女が、そこにいた。



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キミとの帰り道 人生 @hitoiki

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