忘れられた生の記憶の連鎖

この物語は、主人公の堂島シンヤがとある「面接会場」に入ってきたところから始まります。彼を面接するのは「ゼロ」と呼ばれる死神です。彼女はシンヤに「シボウ動機」を訊ねますが、シンヤは就活向きの「志望動機」を答えるばかり。何と彼は自分が死んでいることに気づいていないのです! 死神から己の死を告げられたシンヤは会場から逃げ出して、ゼロは部下である405号と3101号に追わせることになるのです。

この小説は、ネタバレをすることなくレビューするのが非常に難しいのですが、実は、シンヤ、ゼロ、405号と3101号には繋がりがあります。その設定が、何とも魅力的です。シンヤの過去も、渡ると生前の記憶を失うという神話にでてくる「河」を思わせたりもします。コミカルですが、幻想的です。すこし展開が駆け足かもしれませんが、おかげで纏まりがあって、主人公たちの未来に幸あるよう願えるような、きれいな終わり方になっています。