身の丈と、居場所
幽山あき
日常であり、闇
布団の周りには、モンエナの空き缶が転がっている。遮光カーテンのかかったこの部屋では、時間の感覚が分からない。とうとうネトゲのプレイ時間が2000時間を超えた。手近にあった新しいモンエナを開ける。そろそろ、このごみ達を捨てなければいけない。エナドリの薬品臭さが部屋中に蔓延している。虫が湧いていないか心配だ。
手元の缶がもう軽くなっている。俺はもうカフェインが効かない体になったのであろう。エナジーを流し込んだはずが、とてつもない眠気に襲われる。…寝よう。昼寝と言っていい時間なのか分からないが、昼寝をする、ということにしよう。PCを閉じると俺は気絶するように眠りについた。
何時間寝たのかわからない。何日寝ていなかったかさえわからないのだ。部屋中のごみを集める。ふと、寝起きにこの中にいると、このごみ達と自分が同化していくような気がしてきた。所詮ゲーム廃人のすねかじり。世間から見て、この缶と俺は同レベルだろう。はは。そんなことを考えながら気だるげにゴミ捨て場に向かう。玄関を出ると、雲一つない快晴だった。高く昇った日が真っ白で弱弱しい肌に刺さる。人に見られないよう、そそくさとゴミ捨て場に入る。薄暗く湿気たそこに入った瞬間、妙な安心感を覚えた。
「やっぱ、こういうところのが、向いてんだよ」
誰もいないゴミ捨て場で一人、嘲笑うかのように、呟いた。
身の丈と、居場所 幽山あき @akiyuyama
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