03

 最初に会ったのは。電子空間の中だった。


 その頃のわたしは、街の電子関係の細かい便利屋をしていた。電波の接合とか、企業のホームページ作成とか、そういうのをやっていて。そのなかで、突然、声をかけられた。


 はじめて、普通に会ったときから。空気が、合った。惚れたとか、ロマンチックな出来事があったとか、そういう感じではない。単純明快に、お互いの醸す雰囲気が似ていた。


 お互いに似たような生き方をしていて、似たような育ちで。恋人同士というより、兄と姉のような、互いに干渉せず付かず離れずの感じがあった。そして、そのなかで、気持ちが通じ合っているとも、思う。


 彼が立ち上げた民間の電子危機管理サービスは、街のあらゆるところに張り巡らされている。最近、監視カメラを管理する人工知能とも組み合わさることが決定したらしい。


 画面越しに。


 彼の姿を確認して。


 すこし、ほほえむ。


 今日も、いつも通り。


「なんで、目を合わせてくれないんですか?」


 訊いてみる。


『自分の姿を見てから、もう一度同じ問いができるかな?』


 自分の姿。


「いやん」


 下着だけだった。

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