第三話 願い
朝陽がいなくなって数日。
むなしい心に鞭を打ちながら、僕は曲を完成させた。
懺悔の歌に聞こえるかもしれない。でも、朝陽に届けるための、僕なりの究極のラブソングだ。
タイトルは――
「それでは聞いてください。新曲、“願い”」
ギターの弦をはじきながら、歌う。何回も、何回も歌うんだ。朝陽に届くまで歌うと決めた曲だ。
瞼の裏に朝陽が浮かぶ。自信がなくて俯きがちで、でもとても芯が強く情熱を持つ女性。僕の、大切な女性。
今、どこにいる?
聞こえてるかなあ。
ライブハウスは満員御礼。楽曲が少ない代わりに心から精いっぱい歌う。新曲は好評なのだろうか、間奏に入り、閉じていた目を開けた。
「……!」
見間違えるもんか。
観客席の、最後尾。
顔を両手で覆っている細身の女性。
ふいに涙が溢れた。
会いたかった。
会いたかった。
会いたかったんだよ、君に――
☆彡
『えー、本日のゲストは、話題のシンガーソングライター、高屋昴さんです!』
『よろしくお願いします』
『いやあ、リスナーの皆さんにお見せしたいベビーフェイス! 先日のライブで披露された新曲は、観客が泣くほどの名曲だとか』
『僕自身が泣いていたんですけどね』
『思い入れがある曲なんですね!デビューの“Shooting star”も、そうでしたけど』
『はい、この曲は僕の大切な人のために作った曲です』
『お熱いですねー!』
『ははは』
『それでは、聞いていただきましょう! 高屋昴待望の新曲“願い”』
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