誰かの何かになれない雑記帳

帳 華乃

十代は無敵だ

 誰がなんと言ったって学生はきらきらしていた。肌はつやつやで赤々としている。日の光を避けた生活をすると人の肌は青白くなると、経験上知っていて、故に「稀有けうなものだよ」と言いたくなってしまう。

 うら若い彼らには、七日間一度も外に出ないなど、早々起こり得ないのだ。何せ学校がある。着替え、靴を履き、家を出る。朝日を眩しく感じたり、空気の湿りで傘を持つか決めたり、そういったことを自然と行っている。だるいと思いながらの行動であろうと、活力がある。きっと、絶対、最強だ。


 彼らに「若さは良いことだよ」と説けるほど私は歳を重ねておらず、そんな年の差なんて三十代になれば誤差の範囲内かもしれない、でもその程度の差が、大きく思えて仕方がない。

 十代とは多感で、傷つきやすく盲目で、何者にでもなれる気がしてしまうのだと、自分以外の思春期を経験したことがないのに確信している。だって、彼らは美しいのだ。底なしの負の感情を乗り越えられるのは、きっと彼らしかいない。頼れるほどの経験もないのに感情だけで勝ててしまうのは、失ってからしか気づけない無敵さにあるのだと、どうしても思えてしまうのだ。

 十二歳と十五歳は全然違うし、十五歳と十八歳はもはや別人だ。たった三年でも身につく量が違う。半端なく違う。笑えるほど別人になれる。実際笑えるから『黒歴史暴露』なんて見出しがYouTubeやTwitter、Instagramなんかに溢れかえっているのだろう。なんてイタくて真っ直ぐなんだろうかと、私はブルーライトを浴びながら感心すらしてみせる。


 まだ何も失っていないかもしれない私は、それでも彼らが眩しい。輝かしくて青臭くて泥まみれで憎いくらい美しいと言える。唯一無二を求めてもがいていつか「イタい」と思いをせるまで、ずっと無敵でいてほしい。そう思えるから私はまだ、無敵だ。

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