深夜に映画鑑賞した話

 虚しくなるような出来事が起きた時、部屋を真っ暗にして映画を見るのは案外悪くないのかもしれない。たった今初めてそれを試して、するとなぜだか文章を書いてみようかという気になった。

 そして実際にテキストエディタを起動して、今こうして文字を打ち込んでいる。いつも何となく書きたいとか、言いたいことが、言葉にしたいことがあるような気がすると思いながらも、ただ漠然と流れるものを見つめるだけなのに、不思議なものだ。

 本当に、暗い場所が落ち着くのだと思います。紛うことなき日陰に生きる者なのだと思います。

 暗いとあまり周りのものが見えないから、ヤケ酒をする手も止まって、自然と光っていて動く画面に目が向く。所詮人間もただの生き物でしかないのだと思い至る。光があるところに集まって、希望とか未来とかいう光にも集まって、一緒に影だとか闇と称されるものも目に入って辟易する。動いているからぶつかって、動いているものに目を奪われるからよそ見をする。よそ見をするから躓いて、ぶつかって、血を流す。悪意を持った当たり屋もいて、目が付いていても意味が無かったり、耳があっても誰もクラクションを鳴らさないから気づけなかったりもする。理不尽でも自業自得だと言われたり、共感されて慰められたりしながら私も動き続ける。

 誰かの目に止まることを祈りながら、その誰かが何にもぶつからない事を祈りながら。

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誰かの何かになれない雑記帳 帳 華乃 @hana-memo

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