16本目 決心しました、お別れです。
「本当に行っちゃうのじゃ?」
ついに、私が天へ昇る日がやって来ました。
今年で転生120周年です。
創立120周年の学校とかたまにありますけど、流石に老朽化が進んでこれ大丈夫なの?ってなっている時がありますよね。
しかしその点私はまだまだ成長途中なので、老化は気にする必要はありません。
しかし、流石にこのまま成長していって大丈夫なの?ってなっている時はあります。
暫く私の本体ともお別れですね。
ついにこの地を離れる決心がついたのですから、それを揺るがすことなんて……あっては……いけないのです!
ですから、そんなにつらそうな顔をしないで下さい。そんな顔をされると私が悪者みたいじゃないですか。
今まであなたに悪いことなんてしてな(蔦でぐるぐる巻き。お茶会で給仕)……色々な事がありましたね。
別にいつでも良かったのですけど、それに今生の別れってわけでもありませんし。
ですから、そんな顔しないで下さいよ。
天界へ行ったとしてもすぐに帰って来ますから!多分。
「行ってきます」
私の決心がついたこの凛々しい表情を見て悟ったのでしょうか、ティターニアも泣き顔をやめて私に話しかけてきます。
「少し待つのじゃ」
なんでしょうか。貴方の少しはそんなに信用できないんですけど。
長時間引き止められてしまうと、どんどんめんどくさくなってきてしまうタチなので、天界へ行くのがもう100年ぐらい遅くなってしまいかもしれません。
「これをあげるのじゃ」
ティターニアは、自分の髪に刺していた花の簪をこちらに差し出しています。
それは、この出会ってからのうん10年肌身離さず身につけていた髪飾りじゃないですか。
本当に私に渡してしまっていいんですか?
「いいんですか?」
「良いのじゃ、短い間じゃったが久しぶりに楽しい時間を過ごすことができたのじゃから」
ええっと……嬉しいです。
本当に嬉しいときって言葉が少なくなってしまいますね。
「この花はなんていう花ですか?」
「名前は知らんのじゃが、長年髪に刺していたらわしの魔力が結晶化して固まったのじゃ、じゃから、その……。わしの分身としてじゃな」
つまり、自分の身から出た垢で作られた髪飾りだと……そういうことであってます?
「そのぅ」
「なんで遠慮するのじゃー!?」
冗談ですよ。ありがたく頂きます。
ティターニアの手から簪を受け取ると、髪を纏めようとします。
……髪を纏めようとします。
実は私前世男なので、髪なんて結んだ事が無いんです。
しかも髪ゴムならまだしも簪なんてどうやって使えばいいのでしょうか。
この簪めんどくさいのでそこの宝物庫に放置……しまっておいちゃダメですか?
「仕方ないやつじゃな」
私が髪を纏めたことがなかったことがこの不自然な挙動でバレてしまったのでしょう。
ティターニアは私の手からその花を奪い取ると、後頭部へ回って、私の長い髪を弄り始めました。
「ありがとうございます!」
目の前に鏡の樹を召喚したら、どうなっているのか直ぐに確認出来ました。
後ろ髪のボリュームが上がっていて、前からも青い花が確認できます。
とても美しいその花は私の金髪にとても映えています。
「ありがとうございます。やっぱり綺麗ですね」
私のこの姿。
そうです!こんな大切なものをくれたんですから、きちんとお返しをしなくてはいけませんね。
もちろんあげるのは今無くなってしまった髪飾りです。
私にしか用意できない特別なものがいいですよね。
それもティターニアのためにMP自動回復とかつけておきましょう。
こう言うとゲームの装備みたいですけど、見た目もちゃんと拘っています。
私の最高傑作モーリュを元にした綺麗な造花ですから。
さらに七色に光る機能もつけたので。名付けるならゲーミング簪!
というわけでどうぞ!
「貰っても良いのか?」
もちろん!当たり前じゃないですか。
なんでそんなに恐縮してるんですか?
もしかして、私からのプレゼントは期待してなかったですか?
それとも、私の魔力で出来たものは要らないと、そういうわけですか?
そんなこと言われたら即座に天界へ飛びますから。
「ありがとうなのじゃ」
うっ。
もじもじしながらお礼を伝えてくるティターニアが可愛すぎて辛いです。
あっ、私髪を纏めるのはできませんから。自分でお願いします。
という訳で、私は私を世界樹と分離させてくれたティターニアにお礼を告げると、神界へ、天へ向かいました。
私の体がどんどんと空へ昇っていきます。
私の意志一つで好きなところへ移動できるのはとても楽しいですね。
私の体を止まり木にしていた青い鳥たちが私がここから去るのを感じ取ったのか、見送りに羽ばたき追尾してきます。
彼らとの付き合いも長いですからね。
嬉しいです……。なんだか、泣いてしまいそう。
これから身勝手に新しい世界へ旅立つのに、こんなに祝福されてしまうなんて……これだけでこの世界に来てよかったと思えてしまいます。
私の体が私の体を超えた時。
普段見ている風景なはずなのに、何故か感慨深くなってしまいました。
こんなに大きくなったんだなぁと。今の私の体は世界樹の姿より圧倒的に小さいですからね。
感傷に浸っている間にもどんどん視界は広がっていきます。
ふと下を見てみると、私のいた大陸の全体図がどんどん見えてきました。
やっと海を見ることが出来たのです。本当にこの世界広すぎて嫌になっちゃいますね。
私のいた大陸は丸くなっていました。その中心に私が位置していたようです。
そのまま少しずつ昇っていきます。
下は海が見え、別の大陸をいくつか確認できた頃。
ついに別の世界を観測することができました。
目の前にある層普通なら確認できないだろうそれを私ははっきりと感じ取ることが出来ています。
地界と天界の狭間。
この先の世界は真っ暗ですね、遠くにある社のおかげで完全に暗いわけではないですけど。
まるで、宇宙みたいです。
空気が無かったらどうしましょう。
「行きますよ!」
掛け声をつけて勢いよく飛び出します。
それを抜けた先は神界でした。
気合を入れた割にそこまで違いはないみたいようでしたが、たしかに魔力の量が段違い……ですね、多分。そんな気がします。
さて、私のお家はどこでしょう。
最高神なので巨大サイズのはずです。
どれでしょうか。
と、思って探しているとすぐにそれは見つかりました。
なんせ、巨大な樹の形をしているのですから。
枝はどこまで続いてあるのかわからないほど伸びていて、闇の天を貫き続いています。
そこから生えている葉っぱはわたしの心を癒してくれるように優しく光り、この世界を確かに照らしているのです。
わたしの本体といってもいい世界樹が最大まで成長してもここまでなるだろうか?っていうほど巨大で、まさしく命そのものを感じさせられる樹です。
そんな巨大な樹は、根っこに沢山の地面を抱えて宙に浮かんでいるではないですか。
そうあれはまるで、ラピ〇タ!
フヨフヨと宙を飛び近づくと、その巨大な樹の中心には、大きな扉があるのがわかりました。
これまた巨大な扉です。下手したら街一つ収まってしまうかもしれないほどのサイズの扉は、私ひとりの力で開くのでしょうか?
そんな杞憂もすぐに消え失せました。
何故なら近づくと勝手に開きだしたのですから。
ここから始まる私の新たな神生活!
この先には何があるのでしょう!
「お帰りなさいませぇ〜。ご主人さまぁ〜」
「遅いお帰りですね。100年と少しという長い時間待たせるなんてどういう魂胆でしょうか?主様」
……どなた様でしょうか?
世界樹になりました、最高神の一本です。 平和な松の樹 @PeaceTree
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