それは新しい神話。純愛がつむぐ新しい物語。
美しい容姿を持つ母を亡くし、後を追うように父も亡くなり残された兄妹。母の遺言に妖精に告げられた言葉で「自分と同じくらいの容姿を持つ女性をめとる事」とあった。兄は国中の器量良しを集めたが全て見劣りする。ならば、母と同じ美貌を持つ妹と結婚しようとした。兄の狂気を恐れたのオルセッタは魔術師に貰ったビー玉を舐めて、ヒグマに変身し森へ逃げ込んだ……!?
順風満帆であることをいくつかのエピソードを列挙し表しているが、決して嫌味はなく、すくすくと育ってきたことが伝わり、それが一変した時の悲劇さにも拍車をかけている。情景描写や「スクテュスの川」などといった用語、そして豊富な語彙を巧みに用いており、非常に作品の質が高く、西洋的童話として完成している。
お伽噺のようであり、歴史小説のようでもあるお話を彩る情景描写や比喩表現に、筆者の確かな知識が溢れています。本作の舞台はイタリアですが、ヨーロッパの他の国を舞台とした筆者の他作品と同様、具体的に浮かぶ物語の光景が読者を引き込んでくれます。一話完結の短編の中でも、伏線を張り、回収している丁寧さも作品への愛を感じました。