「んぅ」


「ごめん。起こしちゃったかな」


「ここは?」


「車のなかだよ。夜中のドライブ中」


「寝てたのか。わたし」


「心地よく寝てたね。ついキスしてしまった」


「シンデレラね。キスで起きるなんて」


「白雪姫じゃなかったっけか」


「いいのよ。そこらへんは。ああ」


「よく伸びる身体ですこと」


「いい夢を見た。いい夢だった」


「そっか。起こしてごめんね?」


「いいのいいの。いい夢を見て。あなたのキスで起きる。最高よ」


「それなら、よかった」


「いい夢でした」


「どんな夢だったの?」


「覚えてない」


「覚えてないのに、いい夢だったんだ?」


「うん。いい夢だということだけが、わかるの。そう。こんな感じの街中を。歩いてる夢だったかな。なんとなく思い出してきた」


「しあわせそうだね」


「そう。こういう街中で。車の走る静かな音と。信号の点滅があって。うん。ここが、夢の中に出てきた場所」


「予知夢かな?」


「ううん。違う。やさしくて、あたたかい夢だった。わたしに、生きる勇気をくれるような」


「いい夢だね」


「うん。だから。わたしのことを。離さないでいて。勇気が出たの。わたし」


 赤信号のうちに。


「あなたのことが。好きよ」


 告白してしまおう。


「言えた。ずっと勇気がでなくて、言えなかったけど」


 信号が点滅して。


「嬉しいよ。僕も好きだ。ずっと、一緒にいようか」


 青に変わる。


 夜の街。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の中、夜の街(15分間でカクヨムバトル) 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ