夢の中、夜の街(15分間でカクヨムバトル)

春嵐

01

 立ち尽くす。


 誰もいない街中。


 駅前。新幹線とかの駅があって。メインの大通りと。そこから繋がる商店街と、少し離れたところにビルがたくさんあって。


 夜。


 街頭の灯り。


 わたしは。


 なぜここにいるのだろう。


 しんだのかな。


 記憶もない。自分が誰なのかさえ、わからない。ただ、なんとなく。満たされたような気分。死ぬ前の走馬燈とか、そういうものなのかもしれない。


 何も。悔いとか、やり残したこととか。全然ないんだろうか。誰かが、人生の価値は、死ぬ前にやり残したことの量で決まるって言ってたっけ。やり残したことや後悔が多ければ多いほど、それは充実した人生だったらしい。


 じゃあ、わたしの人生は。


 充実してなかったのかな。


 悔いも。


 心残りも。


 記憶さえもなく。


 街中にたたずむだけのわたし。


 遠くで、車の走る静かな音。


 信号の点滅。


「うん?」


 車の静かな音と。信号。


「しんでないな、これ」


 じゃあ、夢か。


 記憶もなく。ただただ、街中にいる。


 すばらしい夢だ。

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