第3話 発覚・拓実の絶望
翌週の水曜日、美雪はどこかへ出掛け始めた。
向かう場所は武田家。友達なんだから当たり前か、うん。そして二人は街へ向かい、ピンク色の建物の前で彼らは止まった。
冗談だよな? そのまま通りすぎるよなっ!!!!
だが、俺の願い虚しく2人はラブホテルへと入っていった。頭の中がぐるぐる回る、吐き気もするし、涙は溢れてくる。
思い起こせば最近行為の回数も明らかに減ってきたし、キスも何回か拒まれたこともあった。
なんとか行為に漕ぎ着けても、美雪の身体に違和感を覚えることだってあった。
サインはいっぱいあったのに……俺は全部気のせいにして見逃した!
「──クソッ!! 俺には……お前しかいないのに……なんで!!」
心のどこかでこうなるとは思っていた。だって、俺達は結婚できない……どちらかが裏切れば繋ぎ止めることなんて出来ない、そんな儚い関係だ。
何度も地面を殴った、鼻水や涙も流れ果てた。
結局、美雪が出てきたのは俺が本来帰る時間の1時間前だった。きっと俺が最近怪しんでるからだろう……はは、流石我が妹、当たってるよ。
そして美雪より遅く家に着いた俺はいつも通りの美雪に出迎えられた。何食わぬ顔でって、まさにこの事か……。
「なぁ、今日さ……しないか?」
「今日はちょっと疲れてるので、また今度じゃダメ、ですか?」
「あ、いや……いいんだ。────なぁ、俺のこと愛してるか?」
「あ、愛してるに決まってるじゃないですか。今更ですよ……ホントに……」
試しに夜の誘いをしてみるとやんわり断られる結果となり、色々なものが身体から抜け落ちた。
俺には君しかいないのに……何故置いていくのだろう。どうにかして引き止めることはできないものか。
絶望し過ぎてクリアになった頭はいつもより遥かに回転数を上げて思考を始めた。
武田 武雄……かつての俺達と同じく虐待を受ける男。すでに独り立ちできる年齢だが、抜け出せないのはトラウマが関係しているからだろう。体験した人間にしかこれはわからない、しかも親は狡猾で人には見えない位置を徹底的に狙ってるはずだ。
何か考えれば思い付くかもしれん、どうせこのまま破滅するんだ。妄想の中で解決方法を模索しても構わんだろ……。
そして思考の果てに思い付く……一か八かの大勝負。外道に近いやり方だが、失敗したとしても、奴はかなりの期間美雪を抱けなくなるはず。
俺は悪魔の表情で次の取引日を確認し始めたのだった。
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