内線電話

ツヨシ

第1話

俺の通う大学の近くに閉鎖された病院がある。

とは言っても閉鎖されたのがほんの一ヶ月ほど前で、外から見るとまるでまだ運営しているかのように見え、そこが心霊スポットと言う話は今のところ聞かない。

ところが同級生の武本が「廃病院に行こう」と言い出した。

理由を聞くと「病院だったんだから、幽霊とか出るんじゃないの」と軽く言う。

気乗りはしなかったが、暇だし行くことにした。


行ってみるとやはり新しいが、窓ガラスが一部割れている。

玄関も無用心なことに鍵はかかっていなかった。

中に入ると一階は待合、受付、会計、そして幾つもの診察室。

二人で一通りまわって二階に行った。

二階は入院患者の病室だった。

階段を上がってすぐのところに看護婦の詰め所があった。

入ってみたが、とくにどうということはない。

俺がもう出ようと考えていたら、突然プルルルルと音がした。

見ると壁に掛けられた内線電話の緑のランプが点滅している。

俺は思わず後ずさったが、武本は一瞬の間を置いた後に受話器をとった。

武本は数瞬なにかを聞いていたが、突然受話器を放り投げると勢いよく駆け出した。

俺は慌てて後を追った。

外に出て車に乗り込んだ。俺は車を発進させる前に武本に聞いた。

「どうした? 電話。誰かなんか言ったか」

武本はしばらくの沈黙の後、言った。

「女が……「逃がさないわ」と言ってた」

それを聞いた俺は、車を急発進させた。


武本を送ってアパートに帰ったが、とにかく俺は落ちつかなかった。

武本が聞いた女の声というのが頭から離れない。

直接聞いたわけではないのに。

悶々としていると電話が鳴った。

出ると武本だ。

「どうした」

「……あの女から電話がかかって来た」

……!

そのとき、電話から武本以外の声が聞こえてきた。

それは女の声で「あなたも逃がさないわ」と言った。


       終

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内線電話 ツヨシ @kunkunkonkon

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