ラストで物語の仕掛けが分かった瞬間キュンとする恋愛青春掌編です

幼なじみの芽衣と、毎朝一緒にバスに乗る拓海。
実はひっそりと芽衣に恋心を抱いているのだが、その日、芽衣は他の男子に告白するつもりだと宣言してきて――

無駄を省いた語りながら、その口調には若者らしい軽さや、文学好きらしいユーモアが滲んでいて、読み心地がとても良い作品です。

時間があると思っていると、ついなんでも先延ばしにしてしまうところや、
自分の趣味って隠したくなってしまうけど、それが裏目に出てしまった時の「くっそう」という気持ちなど、
語られる節々に「分かるな」思える部分があって、語り手を身近に感じることができます。

けれど、一番の魅力は、読者へ向けた一人称の形をとっていた語りが、芽衣に対する語りへ変化するところ、
そして、それがラストで分かる物語の仕掛けとしっかり呼応するところです。
これまで隠してきた自分を、芽衣に対して伝える形をとった文章が、ラストとかっちり繋がった時、芽衣は知り得なかった拓海をどんな風に捉えるのだろうと、キュンとした気持ちになります。

ラスト、その答えが明示されない所にもまた、可能性の広がり、未来の開けた感じがし、青春の匂いを強めています。

素敵な作品ですので、ぜひご一読――じゃなくて二度お読みください。

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