圧巻のクトゥルフ文学

まず物語舞台を極東中国――清朝滅亡直後に置き、違和感なくローカライズに成功している時点でもう凄い。

文体は、文語・漢語・知的優越感誘発語(北京市地理、故事、蕃教など)を巧みに攪拌した“危うい読み心地”が特徴。難読の手前で寸止めしつつ、リズム調整として振られたルビが作品全体の呼吸を決めている。

”如何にも!”といった圧のある雰囲気は最後まで濃密なまま、終幕へ。

TRPG『Call of Cthulhu』に触れたことのある読者には、強力なイメージソースになるはずだ。
約一万三千字、この密度でこの完成度。

——迷わず読むべき一篇。


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