作者の子供時代の思い出をモチーフにした小品集。
昭和40年代、1960年代後半あたり~1970年代半ばくらいの山間の田舎町を舞台にお話しが展開されます。各話の連関はありません。
懐かしいだけではなく、そこで懸命に明るく生きる人々の様子が、細かい心象描写で追われています。どの作品も、ずしりと心に訴えかけてくる、読者を惹きつける力を持っています。
特に最新話。「鼻たれ小僧のケン」が切ない。ケンの荒れた心の内が透けて見えるようで、結末を知ったとき、彼の幸せを願わないわけにはいきませんでした。
これ、フィクションでいいんですよね? どこまでがフィクションなのか分かりませんが、これは書く方も結構辛かっただろうなあ、と思わされました。
わたくしは、これ、とてもお勧めです。