奇病、と聞けばなんともネガティブな方向に意識が向きがちでしたが、天使病というとても美しい病に心がときめきました。もちろん病だし、ご本人は苦しいはずですが……。なんとも、作中にもありますが寝るのが大変そうで……。女医さんと患者さん、というポジションも素敵です。ちょっとビターだけど、アンちゃんの健気さもあって恋愛小説としても好きです。感情面で深い暗さもあるのですが、それも相まってとても美しい作品だなと思いました。
天使病。その名前とは裏腹に残酷な病。罹患してしまったアンさんを患者として極めて冷淡に接するドロテアさん。喪失はあらゆる感情を生む。彼女たちが得た感情が、正しいものなのかどうかはわからない。縋り合うだけの、意味のないものなのかも知れない。しかし私は、二人の関係を美しいと思った。惰性でも諦観でもなく、ただ底抜けに求めあう彼女たちを愛おしく思う。二人は墜ちていく。そのさなかに視野は広く、されども互いの瞳には互いの表情しか写っていないのだろう。寂しそうに、それでいて甘やかに笑う表情しか。
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