恋文

あれは忘れもしない安政六年三月二十九日

俺はあんたに一目惚れした

生まれてから二十四年

あんたほどの奴に出逢ったことは無い


俺はあんたを漢にしたいと思った

あんたを一流にするためなら

この手を血で染めることも厭わない


元治元年六月五日

この日を境に俺たちの環境は激変した

俺は心を鬼にして

時として非情なこともしてきた


けどそれも全てあんたの為

それが重圧になっていたのも分かっていたが

あんたには常に頂点でいてほしかった

俺は大きくなるあんたの背中を見ているのが

何よりの幸せだった


慶応四年四月二十五日

あんたとは今生の別れとなった

あんたがいなくなって北へ赴いても

俺はあんたを忘れたことは一日たりとも無い


俺はあんたとこの地に立ちたかった

俺はあんたの為だけに手腕を振るいたかった

しかしそれはもう叶わない

あんたはもうこの世にいない


それでも俺はあんたの背中を追って

戦い続ける

あんたがいない今となっては

戦地こそ死に場として相応しいだろう

俺もすぐあんたの後を追うよ


鉾とりて月見るごとにおもう哉

あすはかばねの上に照かと


明治二年五月十一日


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遺言 谷内 朋 @tomoyanai

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