見るな
ツヨシ
第1話
あれは私が中学生のときのことです。
ちょっとした病気で入院しました。
そして明日が退院というときに、同い年のいとこがお見舞いにきました。
そしてベッドで上半身を起こしている私をデジタルカメラで撮ったのです。
「見せてよ」
「ちょっと待って」
いとこはそう言うと、今撮ったばかりの写真を見ました。
するといとこの顔が、いままでに見たことがないほどの驚愕の色に染まりました。
「どうした?」
「なんでもない」
「なんでもない? とにかく見せろよ」
「見るな!」
いとこが叫びました。
病院にあるまじき大きな声で。
驚く私をしりめに、いとこは病室を出てゆきました。
次の日、退院したばかりの私に悲報が届きました。
なんと昨日会ったばかりのいとこが死んだというのです。
用意をして父と母とで葬儀場にかけつけると、いとこはすでに棺桶の中でした。
次々と親族などが顔をだし、死因を聞く間もないほどにまわりはあわただしくなっていました。
そんななか、私は不謹慎にもいとこが昨日撮影した写真を見たいと思うようになりました。
そしていとこの父である叔父の姿を見た私は、それなりに気を使いながらも写真が見たいことを告げました。
叔父はそばにあったバックに手を入れました。
そしてカメラを取り出しました。
「デジタルカメラ? これのことかな」
「それ」
「写真ねえ」
叔父はカメラを操作して画像を確認しました。
すると叔父の顔が一気に変わりました。
昨日のいとこと同じ顔に。
「どうしたの?」
「いや、これは……」
「見せてよ」
叔父はきつい眼で私を見ると、大きな声で叫びました。
「見るな!」と。
終
見るな ツヨシ @kunkunkonkon
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