第11話:母性
龍女マリーナが攻撃されると思った黄金龍は、とっさに身体を神の攻撃を防ぐ位置に移動させてしまい、露骨なスキを作ってしまった。
黄金龍が普通に戦っていれば、神に龍女マリーナを攻撃する余裕などなかった。
無理矢理攻撃したとしても、龍や古代竜が防御してくれていた。
初恋にとち狂った黄金龍の愚かさだった。
そのスキを見逃す神ではなかった。
「グッが」
黄金龍は深手を負ってしまった。
致命傷とまではいかなかったが、この後全力で戦えなくなるくらいの深手だった。
だがその愚かな行動が、マリーナの母性を激しく刺激した。
マリーナに黄金龍の事を可愛いと思わせた。
同時に、可愛い黄金龍に深手を与えた神を激しく増悪させた。
その増悪が、全ての龍と竜から力を集めさせた。
「私の可愛い龍になにするの!」
怒りの言葉と共に、神や黄金龍を遥かに超える力が、突き出した龍女マリーナの右腕からほとばしり、神の胸に大穴を開けた。
「再生できないように食べてしまいなさい」
龍女マリーナの言葉を聞いて、全ての龍と竜が一斉に神に襲いかかった。
大穴が開いた神の胸に殺到して、そこから神通力や肉体を喰らいだした。
だが神の力はあまりにも膨大で、いかに龍や竜でも、食べ過ぎると自らが崩壊してしまうのだ。
「もう、馬鹿な子ね、無茶しては駄目よ」
龍女マリーナは黄金龍を嗜めながら、全ての龍と竜が神を喰らって得た力を自分のものとして、回復魔法に使った。
黄金龍が失った龍力と身体を元通りにするには、莫大な力が必要だった。
その力を得るには、神の力を奪うのが最も簡単だったからだ。
「みんなも自分の力を高めるのに神通力を使うのよ」
龍達はほんの少し金の色彩を帯び、黄金龍に進化しようとしていた。
古代竜は脱皮して龍に転じようとしていた。
成竜は老竜に、老竜は古竜に、古竜は古代竜に進化しようとしていた。
神は神界の神通力を集めて、力を取り戻し身体の傷を回復させようとしていた。
だが取り込む神通力よりも奪われる神通力の方が多かった。
神界の他の神が回復の邪魔をしていたのだ。
「ふっふっふっふっ、嫌われ者の末路は哀れね。
周りの人達に嫌われないように、言動には気をつけないといけないわね。
龍もこれからは他の龍や竜に嫌われるようなことをしちゃダメよ。
私は次の子まで父親のいない子にする気はないのよ」
やんわりとした龍女マリーナの誘いの言葉に、黄金龍は痛みも忘れて直ぐに人型に変化し、強く、でもマリーナ傷つけないように、抱きしめた。
聖女は夫の王太子が浮気したので、王孫を連れて出て行くことにしました。 克全 @dokatu
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