第10話:龍竜軍団

「じゃあ、そろそろ行くからね、龍、頼んだわよ」


 龍と竜の大軍団を前にして、聖女マリーナが黄金龍に声をかける。

 聖女マリーナと黄金龍が考えていたよりもはるかに早く、この世界に住む全ての龍と竜が聖女マリーナの従魔となっていた。

 孤独を愛し、というか、あまりにも強大過ぎて、孤独になるしかなかった黄金龍とは違って、龍や古代竜を族長にして、竜達は群れを作っていたのだ。

 特に龍は、竜によってこの世界が滅ぼされないように、竜を管理していたのだ。


「龍の突撃に続いて、古竜が異世界に突っ込んで」


 ギャッオオオオオオオ!


 黄金龍が神界への道を切り開いたと同時に、古竜だけで編制された部隊が神界に突撃したが、神からは何の攻撃もなく、一気に侵攻できた。

 古竜に続いて老竜、成竜と続き、その後を古代竜と龍が神界に入る。

 まだ力不足と考えられる若竜や幼竜はこの世界に残り、万が一神界に遠征した龍と竜が全滅しても、竜が絶滅しないように備えていた。


 ギャッオオオオオオオ!


 だがそんな心配は不用だった。

 初恋に気力が充実している黄金龍が、かつての神との戦いとは比較にならないくらいの力を発揮し、圧倒的に不利な神の世界なのに、神と互角に戦っていた。

 まあ、これにはちゃんとした原因があって、聖女マリーナに力を与えた神は、神界の嫌われ者だった。

 人間界で神は自分しかいないと言って、他の神を否定していたのだ。

 例えば人間社会で、自分だけが人間で他の者は人間ではなく猿だと言ったら、嫌われるのは当然だろう。


「おのれ、聖女マリーナ、この恩知らずが、与えた力を全て奪ってやる」


 神は黄金龍と戦いながらも、目ざとく聖女マリーナを見つけて、怒りの言葉を投げかけるとともに、直ぐに聖女の力を奪った。

 だが、今のマリーナには痛くもかゆくもなかった。

 マリーナには、黄金龍をはじめとした龍と竜の力が与えられている。

 全ての龍と竜が死に絶えない限り、その力を借りることができる。

 いや、力ばかりではなく、命さえも分け与えられている。


「貴男のように身勝手な神の力など不要ですわ。

 私には心優しく誇り高い龍と竜の力が宿っていますの。

 今日からわたくし、龍女マリーナと名乗りますわ」


 龍女マリーナは、わざと小憎らしい態度をとって神を挑発した。

 神の意識が少しでも自分に向くことで、黄金龍を有利にしようとした。

 神が攻撃しようとしたとしても、自分には龍達と古代竜達の守りがある。

 マリーナはそう簡単に考えていたのだが、そこには恋する男、黄金龍の暴走が計算に入っていなかった。

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