100万文字クラスの大長編を完結させて見えた世界と思えたこと

金華高乃

100万文字クラスの大長編を完結させて見えた世界と思えたこと。

 物語を完結させること。

 自らが創り出した世界と物語を終えること。


 物書きならば大多数の方が目標にしていて、到達したい世界の一つだと私は思います。


 2020年9月13日。

 カクヨムでは連載開始から完結まで短い期間でしたが、元々他媒体で連載していた近代異世界ファンタジー戦記、著作『異世界妖魔大戦』を完結させることが出来ました。

 構想から本文執筆、完結に至るまで多くの時間と体力と気力を注ぎ、時には本当に完結させられるのかと苦悩に塗れながらもなんとか書ききることが出来ました。

 作者はこれまでに複数の短編や合同原稿の他にも何作かの長編を書いており、短いもので10万文字程度、長いもので40万から50万文字程度の作品を完結させたことがあります。

 そして、今回の作品は約173万文字に及びました。正直自分でも正気の沙汰じゃねえよなって思うくらいにはよう書いたと思います。

 ですが、これだけの作品を完結させたことで新たに見えた世界と思えたことが幾つかありました。

 下記に、自身への記録も含めて残そうと思います。



 ①好きじゃなきゃこんなに書けへんわ。


 感想の半分以上はこれに尽きます。

 物書きの物差しで考えるならば1万文字程度はかかる時間は別として割と何とか書けると思いますが、その100倍以上ともなるともはや別世界どころのレベルじゃありません。上述でもありましたが、自分でも正気の沙汰じゃねえと思ってました。

 何せ約170万文字といえばラノベ換算で15巻程度にはなります。15巻も刊行されている本は相当少なく、本棚のサイズにもよりますが1列は占拠する幅にはなるはず。それを書き切るのですから正気じゃないと思います。物書きやってること自体が正気かどうかは別の話ですが。

 そして、完結させてみてつくづく痛感しました。こんなの、好きじゃなきゃ書ききれない。自分の性癖に素直になり、自分の好きなものじゃなきゃ到底書けなかったと。

 勿論、これが商業であり物書きで飯食ってるのならまた話が変わってきます。商売である以上は仕事ですからね。

 でもこれ、商売じゃなくて趣味なんですよ。あくまで好きで書いてるだけ。連載してるだけ。極論ですが完結させるも自由、エタらせるも自由なんです。エタ見るのは悲しいことではありますが。

 この辺りは別枠で書いてもいいくらいのことではありますがやはり小説投稿サイトで書いて完結させることって、自分が好きだからやるのが一番なんだなあと、少なくとも私のスタイルとしてはそう思ってます。ランキングに載りたいから流行りものを書く。書籍化ガチで目指したいから流行りものを書く。この際好きなことは書けないけれどそれでも書く。私には出来ない事だと改めて感じました。



 ②完結させることはめちゃくちゃ気持ちいい。


 別にやらしい意味じゃないですよ?

 いやホントだってマジだって。大人の薄い本とかであるそういうのじゃないんだって。


 冗談は程々にして、完結作経験者は多かれ少なかれ感じたことがあると思います。完結させることってめちゃくちゃ気持ちいいんですよ。


 一つの作品を完結させた達成感。

 手塩をかけて考えた作品が終わったという安心感。

 そして、物書きとして一仕事終えたという安堵と自信。

 それらがミックスした結果に生み出される脳汁とでもいうべきものは、作品を長く書いていれば書いているほど強くなります。

 表現があまりにも酷いですが、私は今回大長編を完結させてめちゃくちゃ気持ちよかったです。終えられた安堵感も強かったですが、すごい気持ちよかった。これがあるから物書きやめられないんだよなと思います。

 なので今作品を書いてる作者の皆さん、完結させてみましょ。本当に気持ちいいから。なんかもう色々すごいから。言葉に表現するの難しいくらいすごいから。



 ③完結作があることは物書きにとって何よりの実績になるし、自信にもなるし、メリットしかない



 ネット小説界隈では昨今、完結させることがとても難しいとよく言われています。事実、多くの作品がエタっていますし読んできた作品で完結済になってたり完結済になった方が少ないくらいです。つまり、最低半数以上は未完で終わっているということ。エタ率いくつだとかそちらを分析されている方のエッセイをご覧下さい。ここでは割愛します。


 そもそも作品の長さはどうであれ作品を完結させることは至難の業です。大多数が読まれることなく埋もれていき、ランキングに掲載されるなど大手サイトであれば最早天上界かなんかじゃないのかって思えるほど。

 一番素晴らしいのは読まれてようが読まれまいが書き切ることですが、仙人じゃあるまいしほぼほぼ無理な話です。だってモチベーション続かないですし。モチベーション続く人は公募で出されてるでしょう。


 私は幸いな事に多くの方々に読んで頂いたことでモチベーションは十分維持出来ました。加えて自分の好きなものを書いていましたし、自分の性癖に素直になって書いていたのでセルフコントロールは比較的何とかなりました。

 結果として完結することが出来た。これは本当に感謝してもしきれません。

 その完結させたことというのは、同時に自信にも繋がりました。ここに掲載しているものだと二つ目、掲載していないもの含めて確か数作品目くらい。でも、100万文字クラスの作品を完結させたのは自己史上初。これってやっぱりすごく自信にもなりました。次もこれならまあやれるやろ。100万文字クラス書けたし。って不思議と力が湧いてくるんです。


 それだけじゃありません。上述したようにネット小説投稿サイトでは完結済は少数派です。せっかくだから完結済した作品を安心して最後まで読みたい。そう思われる層は潜在的なものを含めてかなりいると思います。つまり、完結させることはすなわちこれらの層も取り込めるし読んでもらえるということ。読んでもらえる確率が上がるということです。また、常連になってくださった方がいれば次の作品を出した時に「この人は完結させたし、更新ペースはどうであれ次も完結させてくれるだろう」と思ってもらえるわけです。

 これほどの強みは無いんじゃないかと思います。



 ④完結させても次回作を書きたいと思うあたり、私はどこまでも物書きなんだなあ


 完結させた当初。もうしばらくは書くの休もうと思ってました。これだけ書いたんだし、まあええやろ。って。

 ところが長いこと物書きやってると、1週間後にはもう「最新作書きたいなあ」って構想に取り掛かってるんですよ。現にこのエッセイを書いている今日時点で既に6話分の本文が書けました。今月中には連載開始していると思います。カクヨムコンの基準たる10万文字規定は期間内に余裕で越えられると思います。

 こんな感じで、物書きはどこまでも物書きですし、一つ終えたらもう次を考えるものなのでしょう。


 何故ならば、書くのが楽しいから。



 ⑤最後に


 最近の創作界隈は何かときな臭い話題が出たり燃えてたりするのを見かけます。

 嫉妬・憎悪・怨嗟・憤怒と、好きで書いているサイドからするとなんとも物騒な言葉を多く並べてるものだと思います。

 最近のなろう系はダメだ。つまらない。ワンパターン。ありきたり。みんな飽きてる。

 一面ではそうなのでしょうけれど、デメリットばっかり探しても粗探しばかりしててもつまらないでしょう。と私は思います。

 大体、小説を書くのを趣味でやっていて楽しくやれるのが一番なのに、わざわざ自分から火種に突っ込み続けて負の感情爆発させるなんて趣味としてあんまりにも本末転倒だと思います。

 昨今のネット小説に対しては賛否両論もありますし私も思うことは少々ありますが、これは趣味なのですから楽しむのが一番なのです。読むのも書くのも楽しむのが一番。

 せっかくの創作ライフ、面白く楽しくやるのが一番だと思います。それは一つの作品を終わらせたことでさらに強く感じました。



 良い話も悪い話も事欠かさない創作界隈ではありますが、私はこれからも『楽しく自分の好きな物を書いて、自分の性癖に素直になって』書いていこうと思います。


 このエッセイを読んで頂きありがとうございました。もし私に興味を持ってくださいましたら、作者ページより作品をお読み頂ければとても嬉しいです。また、今月中には新作を連載開始するので私の名前を覚えてもらえればこれもまた嬉しい限りです。



 それでは。



 2020/10/04

 金華 高乃


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