主人公の女子高生には、好きな人がいた。眼鏡をかけて、文庫本を読む姿を登下校時に見る。ただそれだけで良かった。好きな人と一緒にいるところを妄想して悦に入り、食堂で弁当をもって待ち伏せ。告白はしなかった。
しかしある時、親友と彼が一緒にいるところを見てしまう。しかも聞こえてきた会話は、明らかに恋愛絡みで……。
主人公は親友の裏切りと、彼を取られたくないという想いから、彼に告白することを決意する。そしてついに屋上で、彼に声をかけるのだが……。
親友と彼との会話の全容がラストで明かされ、全てがひっくり返ります。
心情表現が豊かで、読みやすく、あっという間に拝読しました。
是非、御一読下さい。
『間宮くん、み~つけたぁ~。うふふ』、麗奈の眼差しに入るのは、恋心を抱く間宮くんだけ。他者は見下す存在であり、眼中にすらない。
その冒頭から入る本作品は、まるで二人きりの世界を作り出しているかのよう。夢中になればなるほどに、周りの世界がまるで見えなくなってくるものです。その行き過ぎた行為はもはやストーカー。
当然、その行為を邪魔するものがいれば、容赦なく憎悪を抱くもの。それは例え心許せる者であっても、憎しみの矛先を向けることになるでしょう。
間宮くんと親友の友香が二人きりでいれば、当然それは現実となる。押さえつけていた感情が一気に爆発すると、一方的な恋心が執着心へと変わり、瞬時に独占欲へと変わりゆく様は、もはや愛憎しか存在しません。ここまでくると友情などはそこに存在せず、間宮くんの思惑を無視する一方的な争奪へと変わりゆくのです。それはまるで、人が狂気に走りゆく様を見ているようでした。
決着を付ける為にどうするのか? 波乱含み物語は佳境を迎えて全てが明らかとなります。
読了して、人の思い込みの力は、本当に恐ろしいものだと痛感していました。互いを理解し合い、そして心と心を通わせることができるのならば、きっと解決するに……。
ここで気になる三人の結末は、是非とも拝読して、その目でお確かめください。きっと、驚く真相が読み手を待ち受けています。