第4話 反抗期
時は遡り宴の前夜。
「おいだせよー!!!おれはゆーしゃさまだぞー?ういー」
1人のなんか悲しい人が牢屋で叫んでいた。
「あの、あれどうしましょうか…」
「勇者があんなやつだったとは…。いや、待て。もしやあれは偽物なのではないか…?」
ヒゲを生やしたエラそうな人が、心底がっかりした後、思いついたように言うが、
「いえ、あの人が身につけているものは勇者にしか装備できないと言われた伝説の装備。それに勇者の証もあります。残念ながら間違いないかと…」
近くにいた青年が即否定した。
「そんな、私の憧れが…」
その年で勇者様に憧れるなよと心の中で思いながら、青年は色々なことに溜息をついた。
「…あれは勇者じゃない。ただの罪人だ…うん」
なんか悲しそうにボソボソ言っていたが、
「おーい!!!早く出せよ!!!!俺が誰かわかってんのか!!???パパとママに言いつけんぞ!!!俺のパパとママは強いんだからナーーー!!!!!!」
その一言でおじさんも踏ん切りがついたようで。
「黙れ!!貴様のせいでどれだけの迷惑がかかったと思っている!!!」
近くに潜んでいたネズミがビックリしてひっくり返るくらいの大声で怒鳴りだした。
「うるせー!!俺はゆーしゃだぞー??
なんか、プチっと言う音がした。
「フィール」
彼はそう言うと、青年はどこからかファイルを取り出し紙に書いてあることを読み上げた。
「はい。まずは周囲にいた50人に暴行を振るい全員が軽傷。その場で雷撃魔法を放ち、建物は全焼。ですが、なんでもとっさに避難させた人がおり、それによる犠牲者はなし。その後急に全裸になり、街路を全速力で駆け抜け、いくつかの家屋を破壊。最後に記念公園にて聖遺物である全長300メートルのモニュメントを木っ端微塵にしました」
「で、これのどこか正義の行いなのかね…?」
「うるせー!死人が出てないんだからいーだろー!」
フィールくんはもう一度ファイルに目をやり、
「たしかに死者・重傷者は0ですが軽傷者は100人を超えます。被害総額は、白金貨10万枚分はゆうに超えます。10年かけて魔王を倒した勇者様ですらもらえたのは白金貨100枚のようですし、勇者様が旅路で稼いだ額は年に合計で白金貨が30枚と伺いました。
まぁ、つまりかんたんに言うと単純計算約25000年かけて2500回魔王を討伐すれば借金は完済と…あー。でも、膨れ上がる分を考えると5万年くらいかなー」
なんかこのおっさん、ドンドン性格が酷くなってる気がするけどスルーします。
「けっ!それをどうやって返せっつーんだよー。そんなことより酒もってこいさけー!おりゃあなぁー…zzz」
「寝たか。…自由気ままな奴め。本当に此奴が勇者なのか…?…違う気がするのだが…」
「…僕も信じたくないです…」
2人で仲良く溜息をつくと、彼らは控え室へ戻った。
その場に残ったのは気持ち良さそうに寝る
ボンクラ勇者の寝顔のみである。
どうしようもない大魔王討伐への道 空津 終 @soratu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。どうしようもない大魔王討伐への道の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます