ライカは職員室に入ると、山のように溜まっていた書類や自分の授業の必需品が置いてある。

 それを見るだけで嫌気が差すが、教師だから仕方がない。一時間目の授業もなく、終わっていない書類に目を通す。


 キーン、コーン、カーン、コーン──


 一時間目のチャイムが鳴った。


     ×     ×     ×


 放課後──

 まだ、太陽が西の空へと沈む前。

 教室は、まだ明るく、部活へ行く生徒たちと下校する生徒、後は課題の出し忘れ、再テストの生徒に分かれていた。

 グラウンドからは、金属バットの鳴り響く音や部活動生達の声が聞こえてくる。

 その端の通り道を下校する生徒たちは、来た道を振り返る。

「ああ、やっと終わった」

 背伸びをしながら、アヤカは、今日一日の疲れをほぐす。

 半日以上も椅子に座って、机でノートをとっていれば、変な疲れが出てきてもおかしくはない。

「終わったねー」

 その隣で歩いていたミキが、作り笑いをしながら言った。

 二人は、校門のそばにあるバス停まで、再び、桜並木を歩く。

 まだ、時刻は午後三時半過ぎ。今から返っても遊びに行く時間は十分に確保できる。

「この後どうする? このまま寄り道する?」

「うーん。ま、時間もあるし、ヤマト君には、後で会いに行けばいいから、大丈夫だよ」

 ミキは、スマホで時間を確認しながら答えた。

 校門を出ると、ミキ達の乗るバスが丁度、停留所に停車していた。

 すぐにバスに乗り込み、席に座る。後からぞろぞろと下校する生徒たちがバスに乗り込んでくる。

 バスは、時刻になると、出発し、走り始めた。

 バスに揺られる中、街中を通り、海沿いの通りへと出る。

 ランニングをしている青年。ペットの犬を連れて歩く老人。自転車を漕ぐ主婦とすれ違いながら、バスはようやく海岸沿いの停留所へと到着した。

 車内で立っている生徒から次々と降り、座席に座っているミキ達は、その後に降りた。

「うへぇー、さーむっ!」

 アヤカが、朝と同じ仕草をする。

 夕方の海は冷たい。海風に乗ってくる潮の香りを肌で感じる。

 波が高鳴り、こんな寒い中、サーファーが冷たい海の中へと波を乗りにやってくる。

「とりあえず、ファミレスでも寄っていく?」

 ミキ近くにあるファミレスを指さした。

「うん・・・・・・」

 アヤカもそれに同意する。

 二人は横断歩道を渡り、近くのファミレスに入った。

「はー、あったかい」

 外の寒さが吹っ切れたかのように、店内は春本来の温かさを保っていた。

 二人と同じ考えを持っていたのか、店内には、南高の生徒がちらほらと座席に座って、飲み物やサイドメニューを頼みながら、おしゃべりをしたり、勉強をしていた。

 店の窓側の席に案内された二人は、お互い向き合って座る。テーブルの上に置かれたメニュー表を見ながら、どれにするのか考える。

 メインの定食メニュー欄をとばし、サイドメニュー、飲み物、デザートの所をじっくりと見る。

「どれにするか決まった?」

「うん。一応、アヤカは、決まったの?」

「うーん。後ちょっと、どっちにするか迷ってる」

 アヤカは、サイドメニューのポテトにするか、ピザにするかで、相当迷っているらしい。

 そして、悩んだ末に結論を出し、店員を呼び出す。

 選んだ物を注文し、厨房から出てくるまでの時間、暇を持て余す。

「それにしても、今日の課題多くない? 明日、学校だよ、学校。どうなってンのよ、これ・・・・・・」

 アヤカはバッグから一まとめにした課題をテーブルの上に置いた。

「これ、普通は週末に出す量だよね。明日までに終わらせろって、言われても部活をやっている連中は、困ったものよ」

 アヤカは、出された課題とにらめっこをする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

円卓のヴァイアス @cedcgy1212

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ