Ⅴ
「はい、まずは、今日の職員会議であった話からな・・・・・・」
と、ライカは、話を始めた。
今日の職員会議の話から今日の日程の話、ライカの個人的な話を終え、最後に最上の話で終わる。それから、出席を確認していく。
「それじゃあ、出席とっていくぞ。相沢・・・・・・」
ライカは、出席簿を確認しながら、一人一人の顔を見る。
五十音順に男子から呼ばれていき、ヤマトの番がくる。
「・・・・・・次、
と、ライカはヤマトの名前を呼ぶ。
だが、返事が返ってこない。
「・・・・・・」
ライカはヤマトの席をじっと見つめる。
空席のその場所は、いつにもなく、ただ、空気の存在であった。
「はぁ・・・・・・。次に行くぞ──」
ライカはため息をつき、何も言わず、次の生徒の名前を口にする。
全員の出席を確認した上で、今日の教室内にいる人数が分かった。欠席者は、ヤマトを入れ三人。遅刻の常習犯が、三、四人いる。
遅刻してくるクラスメイトは、いつも一時間目が始まるぎりぎりか、二時間目が始まるぎりぎりに、平然としながら、詫び入れる事なく、教室に入ってきて授業を受ける。そして、休み時間になると、ライカに登校したことを報告しにいくのである。
「──ったく。また、あいつらか・・・・・・。今度遅刻したら、説教が必要だな」
ショートホームルームの時間も少なくなり、ほとんどやることがなくなる。
今日の授業は、六時間授業。普通の高校生といえば、わりと普通の時間割だが、三時間目に体育。四時間目に国語と、最悪のパターンで組まれた時間割なのである。運動した後に、読書をするなど、絶対に眠ってしまうだろう。それに空腹まで加わってしまえば、それこそ授業に集中できるはずがない。
時間がすぎ、終了のチャイムがなる。
間の休み時間は五分しかない。
急いで一時間目の授業の用意をし、担当教師が姿を現すまで、おしゃべりや仮眠を取ったりする。
ライカは、自分の仕事を終え、職員室に向かっていた。
[それにしても珍しい奴が珍しく休んでいたな。まだ、休みの連絡は貰っていないが、まぁ、休みになるんだろうけど・・・・・・]
ライカは職員室に入ると、山のように溜まっていた書類や自分の授業の必需品が置いてある。
それを見るだけで嫌気が差すが、教師だから仕方がない。一時間目の授業もなく、終わっていない書類に目を通す。
キーン、コーン、カーン、コーン──
一時間目のチャイムが鳴った。
× × ×
放課後──
まだ、太陽が西の空へと沈む前。
教室は、まだ明るく、部活へ行く生徒たちと下校する生徒、後は課題の出し忘れ、再テストの生徒に分かれていた。
グラウンドからは、金属バットの鳴り響く音や部活動生達の声が聞こえてくる。
その端の通り道を下校する生徒たちは、来た道を振り返る。
「ああ、やっと終わった」
背伸びをしながら、アヤカは、今日一日の疲れをほぐす。
半日以上も椅子に座って、机でノートをとっていれば、変な疲れが出てきてもおかしくはない。
「終わったねー」
その隣で歩いていたミキが、作り笑いをしながら言った。
二人は、校門のそばにあるバス停まで、再び、桜並木を歩く。
まだ、時刻は午後三時半過ぎ。今から返っても遊びに行く時間は十分に確保できる。
「この後どうする? このまま寄り道する?」
「うーん。ま、時間もあるし、ヤマト君には、後で会いに行けばいいから、大丈夫だよ」
ミキは、スマホで時間を確認しながら答えた。
校門を出ると、ミキ達の乗るバスが丁度、停留所に停車していた。
すぐにバスに乗り込み、席に座る。後からぞろぞろと下校する生徒たちがバスに乗り込んでくる。
バスは、時刻になると、出発し、走り始めた。
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