「はい、まずは、今日の職員会議であった話からな・・・・・・」

 と、ライカは、話を始めた。

 今日の職員会議の話から今日の日程の話、ライカの個人的な話を終え、最後に最上の話で終わる。それから、出席を確認していく。

「それじゃあ、出席とっていくぞ。相沢・・・・・・」

 ライカは、出席簿を確認しながら、一人一人の顔を見る。

 五十音順に男子から呼ばれていき、ヤマトの番がくる。

「・・・・・・次、夜神やがみヤマト!」

 と、ライカはヤマトの名前を呼ぶ。

 だが、返事が返ってこない。

「・・・・・・」

 ライカはヤマトの席をじっと見つめる。

 空席のその場所は、いつにもなく、ただ、空気の存在であった。

「はぁ・・・・・・。次に行くぞ──」

 ライカはため息をつき、何も言わず、次の生徒の名前を口にする。

 全員の出席を確認した上で、今日の教室内にいる人数が分かった。欠席者は、ヤマトを入れ三人。遅刻の常習犯が、三、四人いる。

 遅刻してくるクラスメイトは、いつも一時間目が始まるぎりぎりか、二時間目が始まるぎりぎりに、平然としながら、詫び入れる事なく、教室に入ってきて授業を受ける。そして、休み時間になると、ライカに登校したことを報告しにいくのである。

「──ったく。また、あいつらか・・・・・・。今度遅刻したら、説教が必要だな」

 ショートホームルームの時間も少なくなり、ほとんどやることがなくなる。

 今日の授業は、六時間授業。普通の高校生といえば、わりと普通の時間割だが、三時間目に体育。四時間目に国語と、最悪のパターンで組まれた時間割なのである。運動した後に、読書をするなど、絶対に眠ってしまうだろう。それに空腹まで加わってしまえば、それこそ授業に集中できるはずがない。

 時間がすぎ、終了のチャイムがなる。

 間の休み時間は五分しかない。

 急いで一時間目の授業の用意をし、担当教師が姿を現すまで、おしゃべりや仮眠を取ったりする。

 ライカは、自分の仕事を終え、職員室に向かっていた。

[それにしても珍しい奴が珍しく休んでいたな。まだ、休みの連絡は貰っていないが、まぁ、休みになるんだろうけど・・・・・・]

 ライカは職員室に入ると、山のように溜まっていた書類や自分の授業の必需品が置いてある。

 それを見るだけで嫌気が差すが、教師だから仕方がない。一時間目の授業もなく、終わっていない書類に目を通す。


 キーン、コーン、カーン、コーン──


 一時間目のチャイムが鳴った。


     ×     ×     ×


 放課後──

 まだ、太陽が西の空へと沈む前。

 教室は、まだ明るく、部活へ行く生徒たちと下校する生徒、後は課題の出し忘れ、再テストの生徒に分かれていた。

 グラウンドからは、金属バットの鳴り響く音や部活動生達の声が聞こえてくる。

 その端の通り道を下校する生徒たちは、来た道を振り返る。

「ああ、やっと終わった」

 背伸びをしながら、アヤカは、今日一日の疲れをほぐす。

 半日以上も椅子に座って、机でノートをとっていれば、変な疲れが出てきてもおかしくはない。

「終わったねー」

 その隣で歩いていたミキが、作り笑いをしながら言った。

 二人は、校門のそばにあるバス停まで、再び、桜並木を歩く。

 まだ、時刻は午後三時半過ぎ。今から返っても遊びに行く時間は十分に確保できる。

「この後どうする? このまま寄り道する?」

「うーん。ま、時間もあるし、ヤマト君には、後で会いに行けばいいから、大丈夫だよ」

 ミキは、スマホで時間を確認しながら答えた。

 校門を出ると、ミキ達の乗るバスが丁度、停留所に停車していた。

 すぐにバスに乗り込み、席に座る。後からぞろぞろと下校する生徒たちがバスに乗り込んでくる。

 バスは、時刻になると、出発し、走り始めた。

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