タイトルの通り、一度は死んだ主人公が2周目の人生で前回の記憶を元に目的を達成しようとするお話です。…が、とてもそんなありきたりなあらすじで言い表せるような物語ではありません。
主人公が悪役令嬢ポジションとすると正ヒロインポジションのキャラがいるのですが、その2人が互いに向け合う複雑な感情が尊いを極まり何度も目頭を抑えてしまいました。
主人公はとても人間臭く共感できるキャラクターで、タイトルの通り悪女ではあるのですが幸せを願わずにはいられません。
他の登場人物も全員キャラが立っており、主人公に負けないくらいの悪女もいて、話を毎話毎話かき乱していくので、話に飽きることなく最新話まで一気読みしてしまいました。美しいドレスの細かい描写、貴族社会らしい洒落た言い回しや皮肉などのテンポの良いセリフまわしなど、読者を物語の世界観にしっかり没頭させ、主人公の気持ちに共鳴させてしまう魅力的な文を書かれるなと思いました。
本作はジャンル的には「悪役令嬢」や「やり直し系」「西洋ファンタジー世界」などの最近の流行り要素があるかと思われますが、そんなキーワードの小説はもう読み飽きたよ!という方にこそ読んでほしいです。
私もそう言ったクチだったのですが、今まで読んだ同ジャンルの作品にはない、重さや痛みが感じられすっかり心を鷲掴みにされてしまいました!
本当に続きが楽しみで眠れません。
悪役令嬢モノと言えば、悪役令嬢が実は心優しい娘であったり、悪役令嬢に転生した主人公が破滅ルートを回避するべく奮闘する展開が定番でしょう。
本作が従来の悪役令嬢モノとは一線を画するのは、主人公のヴィーラが紛うことなき悪役令嬢である点です。
本作における悪役令嬢であるヴィーラは、自らの意思で憎きフェアリッテの殺害を試み、1度は命を落とします。そうして時を遡った2度目の人生ですら、今度こそ上手にフェアリッテを殺害するべく憎悪に身を焦がすのです。
しかしどうしてか、読者はそんな彼女を応援してしまう。ヴィーラが悪役令嬢っぷりを発揮するにつれ彼女に惚れ込み、ヴィーラのおいたに加担するような気持ちで読み進めてしまう。
確かな悪役なのに、寄り添わずにはいられない……本作はそんな唯一無二の読書体験を提供してくれます。
従来の悪役令嬢モノに飽きてしまった人も、そうでない人も、ぜひ1度は読んで欲しい名作です。
きっと読み進めるうちに、ヴィーラのおいたを期待する自分に気づく瞬間が、あなたにも訪れるはず。
注)簡単なネタバレが含まれております。
連載開始から拝読させて頂いております。
主人公の「核」と言える「暗殺」が、やり直しによって簡単に反省するのではなく、「今度は上手く殺る」と考え直すのがとても好きです。
そもそも殺そうと考えるまでの感情が、記憶を持ったやり直しで消えるわけが無いんですよね。ヴィーラの誇りも、強さも、全てそこに結びついているのが読んでいてとてもつらいのですが、なお美しく感じられます。
フェアリッテが芯から善良な気質であるのも面白いです。クシェルがヴィーラを厭う理由も、ヴィーラに降りそそぐ悪意にも、必ずなにか理由があるのが、そこに生きている人達の物語を覗かせて頂いているようで、毎回ドキドキさせられます。
更新がとても楽しみな作品です。これからも応援しております。