水晶

 足元に広がる無数のきらきらした水晶は、すべて誰かの魂だ。


 私はここで魂守をしている。水晶の美しさに惹かれて盗もうとする人がたまにいるからだ。

 この前も子供がここに入り込み、ポケットいっぱいに水晶をつめていこうとした。私は子供を叱り、水晶をすべて置いていってもらった。水晶は決してここから離れてはいけないものなのだ。


 ずっと紫の空の下で私はブリキのシャベルを使って水晶をすくってはブリキのバケツに入れていく。

 バケツがいっぱいになったら水晶を小屋の外にある大きな鍋に入れる。鍋は赤いルビーの力で常に熱されていて、中は透明で粘度のある液体で満ちていた。水晶は熱を与えると溶けはじめ、最後には透明な液体になってしまう。

 不思議なことに、どんなに水晶を追加してもこの液体は鍋から溢れ出ることが一切なかった。私は物心ついたときから毎日この作業を行っている。休んだことはない。


 どんなに片付けても、水晶は寝て起きるとあたり一面に広がっていた。形だけが違う透明な水晶たちは真っ白な地面に広がり、ほんのりと紫色の空を写していた。


 私もいつか水晶のひとつになるのだろうか。そんなことを思いながら鍋へ水晶を流し込んだ。

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だいたい500文字小説 シメ @koihakoihakoi

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