一読する限りではちょっと難しい感想になるなと思い、二度三度と読み返してみた。
引越し先に現れる不審者の話。実害はないけれど、深夜に家の前を歌いながら歩いていく。歌っていた内容は語り手にしても親しみのある曲。そのうち気になって聴き入るようなところもあったのだが、ある時からそれをやめる。理由はその謎の人物が物騒な歌詞の歌を口ずさみ始めたことから。
整理してみてもなんなのかよくわからない。意味を求めすぎちゃいけないのかなとも思う。
無理やり拾ってみると、家賃が安い割に治安がいい町という描写がある。与えられる情報から推察するに原因はこの不審者の存在ではないだろうか。不気味ではある、がこれといって害を及ぼしてはいない。そんな存在が結果として地域の治安をコントロールするほどの抑止力として働いているのだとしたら……とまあ深読みではあるし、軽妙な語口にあわせて力を抜いて読むのが正しいのかとも思う。