食べ物の発する信号

 食べ物が食べられるときに「不快」「苦痛」などネガティブな信号を発していることが発見されてから早五年。世界は食べ物に対してバリヤフリーになっていた。


 そもそも、食べ物がネガティブな信号を発するのは「おいしく食べられない可能性」を感じたとき。笑顔で食べるときと嫌な顔をして食べるときでは、後者の方が信号の発信率が圧倒的に高くなった。


 どこから表情を認識しているのかはまだ研究中だが、「笑顔で食事をすると食べ物が不快感を感じにくい」ということは世界的な常識になってきている。しかし、この事実を売れけ入れずに不快な顔で食事をする人がいるのも確かだ。


 実は、私も昨年までは笑顔で食べる意味がわからなかった。料理が信号を発すること自体がデマだと考えていた。


 だが、ある日に気まぐれで昼食を笑顔で食べてみた。すると不思議なことに普段よりもやたらとおいしかったのだ。その日の昼食はよく食べているナポリタンだったが、今までとは味の深みや食感が違っていた。


 「笑顔で食べると味が良くなる」という研究結果は出ていないが、そのうち出てくる気がする。逆の内容かもしれないが。

 きっと明日も私は笑顔でナポリタンを食べている。

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