ぼくが見ていたきみの姿

 彼女が出ていった後の静かな部屋に取り残されて、ぼくは呆然と立ち尽くしていた。ここは一人にはあまりに広い。その空いた隙間を埋めてくれる誰かをつい求めたくなる。だからこそ、若い男女にも注目を集めたし、彼女・・・道子ちゃんも、そんな気持ちになるかと思っていたけど、ぼくの迷惑な思い込みだったのかもしれない。

 ぼくは気持ちを落ち着けたいときのいつもの癖でインスタントコーヒーを入れることにした。道子ちゃんがいた部屋にはパソコンやカバンが残されたままだ。いずれ取りに戻ってきたとき、ぜんぶ終わらせよう。

 ぼくの思い込みも、思い出もぜんぶ。

 カチッ!と音を立てて、コンロに火が付いた。

 青い炎は冷淡に微笑む絶望のようだった。

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