頭のてっぺんから足のつま先まで

作者 佐藤ぶそあ

タグに偽りなし、威風堂々たる『砂糖盛々激甘物語』

  • ★★★ Excellent!!!

 幼なじみの男子に密かな恋心を抱く女子高校生、佐伯さんが己の過剰すぎる身の丈にいろいろ悩んだり振り回されたりする物語。
 恋のお話です。ていうかもう、恋です。なんか甘酸っぱい恋心の濃縮液みたいな。ただのベタ甘というよりはほろ苦い甘酸っぱさ、そしてそこからの激甘大団円、といった趣の作品です。単に恋する人の脳内を活写したものではなく、明確なドラマを通じて語られる恋。要は(というか紹介文にある通り)身体に関するコンプレックスのお話で、すなわち成長期の少年少女ならではの懊悩を描いている、この点がもう問答無用に素晴らしいです。読み応えがあり、またこの溜めがあればこその説得力、というか糖分。
 登場人物の造形が好きです。みんな自然というか、わざとらしさや無駄な尖り具合のない感じ。特に好きなのは主人公で、自分の高身長を気にしていろいろ気後れする人なのですれど、でもそのわりにはそこまで後ろ向きなわけじゃない。むしろ冷静、というか実はだいぶ男前なところがあって、なんと自分で自分に呪いをかけていることを理解している。中盤あたり、「宏ちゃんとの関係を勝手にぎくしゃくさせているのは、私だ。」の一文。
 この辺ものすごく好感持てるというか、なるほどゴリラだと思いました。強い。誰にも負わせることのできない責任ならば、自分で乗り越えるしかないのだと理解してしまえる人。ことが恋愛絡みであれば、まして十代の少女のそれなら、多少のわがままや無茶は通ってしまうはずなのに。いや単に「でかいから」という理由からの振る舞いかもしれませんけれど、でも格好いい人だと思います。普通に尊敬や憧れの方向で好きになれる人。
 以下はネタバレを含みますのでご注意ください。
 終盤の盛り上がりがもう最高でした。ここまで溜めに溜めたドラマが全部、余さず糖分に変換されていくところ。ここ本当にうまいというかずるいというか、要は「満を辞しての告白のシーン」であるのに、成功が完全に確約されているんです。そこのハラハラは少し前、小林さんとのシーンでもう済んでいるので。つまりこの先何が来るのか完全にわかっているというか、恋愛感情に含まれる期待と不安、そのうちの前者だけの津波が押し寄せてくるのを、何もできずただ受け止めるしかないような状態。思った以上に凶悪でした。なんですかこの糖分のシャワー。死ぬのでは?
 大きくなったら、の意味。最後に逆転、といっていいのか、呪いのとけ方もおしゃれなのにデコボコで好きです。実は宏ちゃん側のひとことが発端だったという真相。あれっ自家中毒かと思ってたけどこれ責任の一旦どころか結構な割合でこいつのせいでは? と、理屈の上ではそのはずなのだけれど、でも全然責める気にはなれない。本当に心の底から「まあそういうことならいいや」と思える。なんだか魔法のような満足感。なるほどハッピーエンドってこういうこと? と思わされる、とても素敵な恋物語でした。面白かったです。

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